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ラ・フォル・ジュルネ金沢 「熱狂の日」音楽祭2013:パリ,至福の時:フランスとスペインの音楽
本公演2日目
2013年5月4日(土祝) 石川県立音楽堂コンサートホール,JR金沢駅周辺

Review by 管理人hs  

ラ・フォル・ジュルネ金沢2013の本公演は2日間と短かったのですが,とても密度の濃い2日間だったと思います。2日目の方は,石川県立音楽堂の方ではフランスの大作交響曲が2つ,金沢市アートホールの方では,実力のあるピアニストが次々と登場。聞きごたえ十分でした。恒例の交流ホールでのクロージングコンサートも大いに盛り上がり,全公演終了後は,「祭りの後」の名残を惜しむ人の姿が大勢いました。

クロージングコンサート後の交流ホール

今年,私は,結局,コンサートホールで行われた公演(2日で8公演!)を全部聞いてしまいました。そういう構成になっていたからなのですが,同様な行動を取った人が多かったのか,どの公演も大入りでした。その間の公演ですが,結果的に金沢市アートホールで行われたピアノ公演ばかりを選んでしまいました。というわけで,本日は,ホテル日航金沢と全日空ホテルの間の横断歩道を何回も何回も渡ることになりました。

音楽堂とアートホールについては,「10分あれば十分間に合う」(ダジャレのようでも標語のようでもあります)ことが分かってきたので結構ギリギリまでサイン会に参加したり,無料公演を眺めたり,段々と時間の使い方が上手くなってきた感じです。通常のオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演では,30分ほど前には会場に入っていることが多いのですが,ラ・フォル・ジュルネになると5分ほど前に入れば十分という感覚になってくるのが面白いところです。

反面,音楽堂とアートホールの往復ばかりしていたせいで,JR金沢駅や鼓門下の公演(考えてみれば交流ホールの公演にも)に全然行けませんでした。この点は残念でした。

というわけで,「せめて朝一だけでも」ということで,JR金沢駅や鼓門下の様子を眺めてからコンサートホールに入ることにしました。朝10時代でこの賑わいというのはすごいと思います。





さて本日の公演ですが,まず午前中,コンサートホールで行われた現田茂夫指揮OEKの公演を聞きました。



【211】11:00〜 コンサートホール
1)サラサーテ/カルメン幻想曲 op.25
2)ビゼー/「アルルの女」第1組曲
3)ビゼー/「アルルの女」第2組曲
●演奏
現田茂夫指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサートマスター:サイモン・ブレンディス),レジス・パスキエ(ヴァイオリン)*1


カルメン幻想曲でのレジス・パスキエさんのソロは,自由自在に揺れるテンポで,大道芸を見るような面白さがありました。かなりスリリングなところもありましたが,現田茂夫指揮OEKがピタリと付けており,演奏をしっかりと盛り上げていました。

後半は「アルルの女」の第1と第2組曲が全部演奏されました。最近のオーケストラの定期演奏会では,この組曲が演奏される機会は減ってきている気がしますが,こうやってまとめて聞いてみると,本当に良い曲ばかりですね。クラシック音楽を聞き始めた,小学生の頃などを思い出し,ちょっと懐かしい気分に浸ってしまいました。

冒頭の前奏曲のユニゾンから大変鮮やかで,どの曲についても明るい響きを中心に安心して楽しむことができました。この組曲で印象的なのはサクソフォンが入っていることでしょうか。今年のラ・フォル・ジュルネ金沢で,前半のエリア公演からずっと活躍していた筒井裕朗さんがメンバーに加わっており,曲全体に甘くマイルドな味わいを加えていました。曲の中では第3曲の「アダージェット」が本当に美しいですね。第4曲のホルン4本による「鐘」の音も堂々としていました。

第2組曲の方は最初のパストラールからプロヴァンス風の太鼓が加わっていたり,南フランス気分たっぷりです。筒井さんのサックスが活躍する第2曲間奏曲に続いて,おなじみのメヌエットになります。今回は岡本えり子さんのフルートの音には楚々とした美しさがあり,ここでもまた懐かしい気分にさせてくれました。この曲は,フルートとハープに続いて,段々楽器数が増えていくのですが,その流れの良さも素晴らしいと思いました。最後のファランドールではプロヴァンス風の太鼓のリズムを中心に進んでいきますが,最後の最後にトロンボーン3本が加わって一気に音が膨らむ辺りがいつ聞いても良いですね。現田さんの指揮ぶりも「盛り上げ上手」という感じでバシッと気持ちよく締めてくれました。



各公演後の音楽堂前広場もとても賑わっていました。演奏予定リーフレットに書かれていないアーテストが「ゲリラ的(?)」に演奏を行っていたり,いかにもお祭りらしい雰囲気に溢れていました。

音楽堂前広場の様子。一日中にぎわっていました。野外でピアノ三重奏というのは,かなり珍しいですね。藤原朋代さん,平野加奈さん,細川文さんによる演奏も予定外だったようです。



【232】12:15〜 金沢市アートホール
ドビュッシー/アラベスク第1番
ドビュッシー/組曲「子どもの領分」〜「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」,「小さな羊飼」,「ゴリウォーグのケークウォーク」
ドビュッシー/レントより遅く
ドビュッシー/ベルガマスク組曲〜「月の光」
ドビュッシー/前奏曲集第1巻〜「亜麻色の髪の乙女」
ドビュッシー/夢
ドビュッシー/前奏曲集第2巻〜「風変わりなラヴィーヌ将軍」
ドビュッシー/版画〜「雨の庭」
ドビュッシー/前奏曲集第1巻〜「沈める寺」
ドビュッシー/小さな黒人
ドビュッシー/前奏曲集第2巻〜「花火」
(アンコール)ドビュッシー/ピアノのために〜前奏曲
(アンコール)ドビュッシー/映像第2集〜金色の魚
●演奏
フィリップ・カサール(ピアノ)

この日最初のアートホール公演は,その名も「ベスト・オブ・ドビュッシー」ということで,フィリップ・カサールさんのピアノ独奏で,ドビュッシーのピアノ曲の中から名曲を選りすぐったようなプログラムが演奏されました。

カサールさんは,結構バリバリと弾きまくるタイプのピアニストで,大変鮮やかなドビュッシーを聞かせてくれました。ただし,ドビュッシー独特の精妙な気分よりは,技巧が前面に出過ぎているようなところがあり,この辺は好みが分かれるかもしれません。今回のプログラムでは,「ゴリウォーグのケークウォーク」「風変わりなラヴィーヌ将軍」「小さな黒人」とユーモアのある「ケークウォーク系(?こんな言葉があるか知りませんが)」の作品が3曲も入っており,カサールさんのキャラクターによく合っていると思いました。

その他の曲では,「雨の庭」での切れ味鋭いスタッカート(見事な雨の描写),最後の「花火」での閃光が目に見えるような鮮やかな技巧などが特に印象的でした。「沈める寺」は,昨年,クリスチャン・ツィメルマンの演奏で聞いたことがありますが,それに比べると,「沈み方が浅いかな?」という気はしました。

ちなみにこの公演の時,最後の曲が終わった後,ルネ・マルタンさんが入ってこられました。そのせいもあるのか,アンコールが2曲も演奏されました。これらもまた鮮やかでした。
 
終演後,カサールさんからサインを頂きました。

 
ホテル日航金沢でも演奏を行っていました。



【212】13:30〜 コンサートホール
ベルリオーズ/幻想交響曲 op.14
●演奏
現田茂夫指揮大阪フィルハーモニー交響楽団

13:30からは,ラ・フォル・ジュルネ金沢初登場となる大阪フィルが登場し,現田茂夫さん指揮でベルリオーズの幻想交響曲を演奏しました。この公演については当初は行かないでおこうかなと思っていたのですが(余りにも予定が詰まっていたので,エリア公演の方を見ようかなと思っていました),「金沢で幻想交響曲の演奏をプロのオーケストラで聞く機会は滅多にないことだ」と思い直し,当日券を購入しました(もしかしたらステージキャスト席もあるかな?と思ったのですが,さすがに編成が大きいのでありませんでした)。

演奏の方は,曲の前半はやや抑え気味というか堅い感じがしました。全体に慎重な感じがしました。第2楽章も端正なワルツという感じでした。第3楽章も「荒涼たる風景」というよりは「穏やかな風景」という感じでしたが,楽章後半でティンパニを4人の奏者でドロドロドロドロと叩く辺りは面白かったですね。舞台裏でのイングリッシュホルンの演奏と併せ,ベルリオーズならではのオーケストレーションを楽しむことができました。

第4楽章以降は,対照的に金管や打楽器が全開になり,バシっと爽快な音を聞かせてくれました。「断頭台への行進」の部分では,トランペットを始めとした整然とした金管の響きが特に良いと思いました。第5楽章でもクラリネットをはじめとした管楽器の明晰な響きが印象的でした。現田さんの指揮ぶりは,こういう楽章でもテンポが大きく崩れることがなく,その点でちょっと真面目過ぎる気はしましたが,楽器を非常に爽快に鳴らしてくれたので,演奏全体が大変後味の良いものになっていました。テューバ2本による「怒りの日」のメロディ,最後の部分でのバスドラムの強烈な響きなど,堂々たるスケール感を感じさせる一方で,最後の音などは「バシっ」という感じの気持ちの良い響きを聞かせてくれました。

演奏後は,第5楽章で舞台裏で使っていた「鐘」をわざわざステージに出して,見せて頂きました。チューブラベルのようなものかなと思っていたのですが,絵に描いたような鐘の形をした「鐘」(金色の鐘でした。大小2つ使っていました)が出てきたので,思わず鐘に向かって拍手してしまいました。お客さんも「へぇ」「なるほど」という感じで喜んでいました。
 
カフェコンチェルトにあった変わった形の椅子 

 
イジー・ヴォルトバさんのイラスト。ワークショップを行っていたようです。



【233】14:45〜 金沢市アートホール
ドビュッシー(ラヴェル編曲)/夜想曲〜「雲」,「祭り」
シャブリエ/狂詩曲「スペイン」
ラヴェル/スペイン狂詩曲
ラヴェル/ラ・ヴァルス
(アンコール)プーランクの2台のピアノ用の作品(曲名不明)
●演奏
リディア・ビジャーク,サンヤ・ビジャーク(ピアノ)

またアートホールに移動し,ラ・フォル・ジュルネの常連のビジャーク姉妹の演奏を聞きました,このお2人ですが,今回もまた聞きごたえたっぷりの強靭で華麗なピアノを聞かせてくれました。

ドビュッシーの「夜想曲」の「雲」のけだるい気分で始まった後は鮮やかな演奏の連続でした。1曲目では,今回,お姉さんのリディアさんと妹さんのサンヤさんが交替で第1ピアノを担当していました。見た感じ,お姉さんのリディアさんのタッチの方が力強い印象があり,2曲目のシャブリエの狂詩曲「スペイン」,3曲目のラヴェルのスペイン狂詩曲(考えてみるととても良く似たタイトル)ではさらに華やかさがありました,

特にラヴェルのスペイン狂詩曲の方は,各曲ごとに繊細さと豪快さ,静謐さと華やかさとが交錯し,陰影に富んだスペイン情緒をたっぷり感じさせてくれました。オーケストラの実演では聞いたことはないのですが,オーケストラの表現力に迫るような演奏だったと思います。

最後のラ・ラヴァルスは,昨日は井上道義さん指揮のオーケストラ版で聞きましたが,2台のピアノ版も華麗ですね。最後の方でグリッサンドの応酬になる部分の迫力は実演ならではだと思います。

アンコールではプーランクの曲が演奏されました。曲名は分からなかったのですが,スピード感とウィットのある,いかにもプーランクらしい作品でした。

それにしてもこのお2人はパワフルです。正直なところ,聞いているだけで結構疲れてしまいました(が,これは単に連日演奏会のハシゴをしているからでしょうね)。

 お2人からサインを頂きました。アートホールはサインをもらいやすいですね。



【213】16:00〜 コンサートホール
1)シャブリエ/狂詩曲「スペイン」
2)サン=サーンス/交響曲第3番ハ短調op.78「オルガン付」
●演奏
井上道義指揮大阪フィルハーモニー交響楽団,黒瀬恵(オルガン)*2


16:00からは,再度大阪フィルの公演を聞きました。今度は井上道義さん指揮で,サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」が演奏されました。個人的に「今回の目玉」と思っていた公演でしたが,その期待どおりの素晴らしい内容でした。

この「オルガン付き」に先立って,先程,2台のピアノで聞いたばかりのシャブリエの狂詩曲「スペイン」がまず演奏されました。こういう同じ曲の聞き比べができるのもラ・フォル・ジュルネならではです。ホールが広いこともあり,こちらの方が開放的な気分がありました。音が生き生きと流れ,アクセントがクリアにビシっと決まり,井上道義さんの指揮ぶりにぴったりの,リゾート気分満載の演奏といった感じでした。

「オルガン付き」の方は曲の雰囲気としては,意外に古典的な感じです。第1楽章前半は静かに,ミステリアスに始まります。井上道義さん指揮大阪フィルの演奏は,最終楽章の派手な部分だけではなく,こういった部分でも魅力的でした。これから何が起こるのだろうという期待を持たせると同時に何とも言えないクールさがありました。

第1楽章後半には,オルガンの音が静かに入ってきます。大阪フィルの音と黒瀬恵さんの演奏するオルガンの音が見事に溶け合い,有無を言わさずにゴージャスな気分にさせてくれます。最高の癒しの音楽ではないかと思います。

第2楽章の前半はスピード感のあるスケルツォ風の部分です。オルガンと対を成すようなピアノの音も気持ちよく,喜ばしい気分を作っていました。第2楽章後半でいよいよ,オルガンの音がバーンと加わります。この部分は何度聞いても痺れます。最後のクライマックスに向かって,どんどん音楽が大きく盛り上がっていくのですが,弦楽器やピアノの音がとても爽やかに響くので,重苦しいばかりでないところが,この曲の親しみやすさだと思います。

オルガンの重低音がオーケストラに加わると,音の厚みが増し,何とも言えない壮麗さに包まれるのですが,黒瀬さんの演奏するオルガンの音自体,うるさい感じが全くなく,オーケストラとの音のバランスがぴったりでした。特に曲の最後で長く音が伸ばされる部分では,オーケストラの最強音とオルガンの音との絶妙のブレンドを楽しむことができました。「音楽堂のオルガンの音は澄んだ綺麗な音だなぁ」と改めて感じると同時に,この場にいる幸福感を実感しました。オルガンを担当した黒瀬恵さんは特に盛大な拍手を受けていましたが,さすがだと思いました。満席のお客さんも曲の素晴らしさと同時に音楽堂のオルガンの素晴らしさを実感できたのでないかと思います。



【234】17:15〜 金沢市アートホール
ドビュッシー/前奏曲集第1巻〜「沈める寺」,「西風の見たもの」
ラヴェル/鏡〜「悲しい鳥たち」,「海原の小舟」
ラヴェル/夜のガスパール
(アンコール)グラナードス/アンダルーサ
(アンコール)アルカン/鉄道
●演奏
広瀬悦子(ピアノ)


その後,またまたアートホールに移動し,今度は広瀬悦子さんのピアノ独奏を聞きました。
 この横断歩道を何回も渡りました。

ここでも技巧的な曲の連続だったのですが,いかにも楽々と演奏していたフィリップ・カサールさんとは違い,鬼気迫るような迫力を感じました。個人的には広瀬さんの演奏の方に強く惹かれました。

最初に演奏されたドビュッシーの前奏曲の中の2曲では,ピアノの音自体が詩的だと思いました。両曲とも大きく盛り上がる出てくるのですが,物理的に強い音を聞かせるというのではなく,各曲ごとのストーリーの中での必然性のある強音という印象を持ちました。どこかヴェールが掛かったような深みのある音もドビュッシーにぴったりだと思いました。

ラヴェルの鏡の中の2曲も大変魅力的な演奏でした。「悲しい鳥たち」の方は前日,田島睦子さんの演奏でも聞いたばかりですが,透明な悲しさと同時に,どこか官能的な雰囲気を持っていました。「海原の小舟」は,海原を象徴するように揺れる音型が繰り返しでてくるのですが,この陶酔感が魅力的でした。キラキラする音が,妖しく光ったり,狂気を感じさせたり,ラヴェルのピアノ曲の魅力にすっかりはまってしまいました。

最後に演奏されたラヴェルの「夜のガスパール」も素晴らしい演奏でした。演奏するのに非常にエネルギーのいる難曲ですが,曲の魅力を十全に伝えてくれました。第1曲の「オンディーヌ」は,水つながりということで「海原の小舟」に通じるような雰囲気がありました。硬質なタッチからは,十分に鮮やかではあるけれども,どこか詩的な気分を秘めた,屈折した感情が伝わってきました。第2曲の「絞首台」は,どこまでも時の刻みが続くようなシンプルさが意味深でした。「怖いけれどもその場所に留まっていたい」といった不思議な感覚がありました。

そして第3曲の「スカルボ」です。飛び回る小悪魔を表現した曲なのですが,そのイメージどおりのスピード感がありました。広瀬さんの表現意欲がダイレクトに伝わってくるような演奏で,最後の方の強打には,鬼気迫るような迫力とエネルギーが満ちていました。

アンコール曲にも驚かされました。非常に流れよくグラナードスのアンダルーサが演奏された後,アルカンの鉄道という曲が演奏されました。列車が走っている様子を描写した曲ですが,日本の童謡のようなのどかさは皆無で,これでもか,これでもかという細かい音の動きが延々と続きました。聞いている間は,息が止まってしまうような感覚になりました。ここまで技巧的な曲も珍しいと思います。それを見事に聞かせてくれました。天晴れという感じでした。大相撲ではありませんが,今回のLFJKで技能賞を決めるとすれば,この広瀬さんの演奏にあげたいと思います。

ちなみにこの曲ですが,日本で最初にアルカンに注目したピアニストと言っても良い金沢出身のピアニスト金澤攝さんが中村攝と名乗っていた頃にレコーディングをしています。





【214】18:30〜 コンサートホール
1)オッフェンバック/喜歌劇「天国と地獄」序曲(抜粋)
2)ビゼー/「カルメン」第2組曲
3)ドビュッシー(カプレ編曲)/ベルガマスク組曲〜月の光(オーケストラ版)
4)サン=サーンス/序奏とロンド・カプリチオーソ op.28
5)(アンコール)ヴェニスの謝肉祭のテーマによる変奏曲(曲名不明)
●演奏
井上道義指揮*1-4オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサートマスター:サイモン・ブレンディス),キリル・トルソフ(ヴァイオリン)*4-5


コンサートホールでの最後の公演は,井上道義指揮OEKによる,フランス音楽アラカルトといった感じの公演でした。ちょっと焦点が絞りにくいプログラムでしたが,有名な曲の連続で,超満員(LFJK1年目以来の大入りだと思います)のお客さんは大喜びでした。

まず最初にオッフェンバックの「天国と地獄」序曲が演奏されました。序奏部の後,遠藤さんのクラリネット独奏が入りました。本当にたっぷりと聞かせてくれてました。続いてコンサートマスターのサイモン・ブレンディスさんの独奏になりましたが(この辺はかなりカットを行っていました),こちらも艶やかな音をたっぷり聞かせてくれました。最後のフレンチカンカンの部分は,ノリノリという演奏でした(個人的には,この曲をクロージングコンサートで演奏して,手拍子入りで締めてくれても良いかなと思いました)。

続く「カルメン」組曲については,ラ・フォル・ジュルネ金沢の期間中,色々な楽器で聞いてきましたが,ここで演奏されたのは,ホフマンが抜粋した第2組曲の方で,オーケストラだけではあまり演奏されないような曲も含まれていました。

途中,「アルルの女」組曲の中の「メヌエット」が追加で演奏されました。この曲はとても良い曲ですが,午前中に一度聞いていた上,クロージングコンサートでももう一度演奏されましたので,あえてここに加える必要はなかったと思いました

カプレによってオーケストレーションされたドビュッシーの「月の光」が静かに演奏された後,最後にキリル・トルソフさんの独奏でサン=サーンスの序奏とロンド・カプリチオーソが演奏されました。この曲は,オープニングコンサートで竹澤恭子さんが演奏したので,どうしても比較してしまいます。トルソフさんの演奏も悪くはなかったのですが,竹澤さんの「濃い演奏」に比べるとソツはないけれども,やや味が薄いかなという気はしました。

トルソフさんの演奏では,むしろアンコールで盛り上がりました。「ヴェニスの謝肉祭」の主題による変奏曲だと思いますが,ほとんど即興演奏のような感じで,次々と華麗な技巧を見せてくれました。しかも,コンサートマスターのブレンディスさんに「この音型を繰り返してください」という感じでお願いをした上で,OEK弦楽合奏の簡単な伴奏付きで演奏されました。恐らくリハーサルなしだと思いますが,見事に合わせていました。さすがOEKだと思いました。

この公演が終わった後,恒例のクロージングコンサートが交流ホールで行われました。開演まで少し時間があったので,音楽堂付近で写真を撮影

  
音楽堂前は常ににぎわっていました。右はJR金沢駅で使われていた「白いピアノ」を片付けているところ。

  
この頃から謎のペンギンが出現。右はOEKメモ帳を使ったメッセージ集。

クロージングコンサートの開演は20:30だったのですが,かなり前からお客さんが大勢交流ホール前に並んでおり,時間が遅かったにも関わらず,ホールには人がぎっしりという感じになっていました。

謎のペンギンのキャラクターがクロージングコンサートのPRをしていました。

【246】20:30〜 交流ホール
1)モノー/愛の讃歌
2)ロドリーゴ/アランフェス協奏曲〜第2楽章
3)タレガ/アルハンブラの思い出(管弦楽伴奏版)
4)ファリャ/恋は魔術師〜火祭りの踊り
5)ビゼー/「カルメン」組曲第1番
●演奏
井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサートマスター:サイモン・ブレンディス),ジリ・ヴァンソン(歌)*1,太田真佐代(ギター)*2-3

交流ホールの天井が低い部分には意外に音が通りにくいのですが,やはり,(私を含め)ラ・フォル・ジュルネ金沢の最後では,OEKメンバーと一体になって締めたいと思う人が多いのだと思います。ラ・フォル・ジュルネ金沢にはなくてはならないイベントになりました。

今年のクロージング・コンサートは,今回のLFJKで大活躍したジリ・ヴァンソンさんと井上さんのトークを交えて進行しました。ヴァンソンさんは,4月28日のオープニングコンサートを皮切りに,この1週間,毎日のように石川県内のあちこちを飛び回っていましたが,今年の音楽祭を大きく盛り上げてくれた貢献者でした。この1週間で,金沢での人気はさらに高まったと思います。大変日本語が上手な方ですので,いつかまた金沢に来てもらいたいですね。

 
これはリハーサルの様子です(全部上から見えてしまいます)。ヴァンソンさんが歌を歌っています。

このヴァンソンさんの歌で「愛の賛歌」が歌われた後,地元のギタリスト,太田真佐代さんを交えてアランフェス協奏曲の第2楽章が演奏されました。アンコールではOEKの「静かな伴奏付」のアルハンブラの思い出が演奏されましたが,どちらも今回のLFJKを振り返るのにぴったりの演奏だったと思います。

静かな曲が続いてので,気分を変えてファリャの「火祭りの踊り」がエキゾティックに演奏された後,最後は,カルメン第1組曲が演奏されました。最後に演奏された前奏曲ではお客さんの手拍子入りとなり,大きく盛り上がって締められました。

今回のトークの中で井上道義さんは「ラ・フォル・ジュルネ金沢をお祭りで終わらせたくない」と語っていました。この言葉は結構重いですね。個人的には,ラ・フォル・ジュルネは「お祭り」で良いと思うのですが,井上さんとしては,日常(=OEKの定期公演)の方も充実させたいという思いが強いようです。

今年のラ・フォル・ジュルネ金沢については,「お祭り」としては大成功だったと思います。石川県や金沢市に「無くてはならないお祭り」として定着したと思います。それをどう日常につなげれば良いのか?心地よいお祭りの余韻に浸りつつも,常に先を見ている井上さんから大きな課題を呈示されたような気がしました。

 
すべての公演が終了。今年は「完売」が多かったですね。

 
ラ・フォル・ジュルネ金沢2013写真集が掲示されていました。 右はお土産に買っていった辻口さんのマカロン。こちらも「完売」していました。

(2013/05/11)