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小松シティ・フィルハーモニック第15回定期演奏会 2014年2月9日(日) 14:00〜 こまつ芸術劇場うらら大ホール バーンスタイン/「キャンディード」序曲 ガーシュウィン/パリのアメリカ人 ドヴォルザーク/交響曲第9番ホ短調作品95「新世界から」 (アンコール)シュトラウス,J.II/ポルカ「観光列車」 ●演奏 野村幸夫指揮小松シティ・フィルハーモニック
キャンディード序曲は,最近では,日曜朝の「題名のない音楽会」のテーマ曲としてよく知られていますが,私自身,オーケストラの生演奏で聞いたのは本当に久しぶりのことです。変拍子風の部分や,音が複雑に絡み合うような部分では,演奏に苦労しているような感じもありましたが,各楽器の音が原色的に飛び込んできて,開幕に相応しいパンチ力がありました。柔らかくしっとりとした歌わせた第2主題では,しっかりと低音の魅力が感じられました。 「パリのアメリカ人」は,まず,楽器編成が面白かったですね。3種類のサクソフォーンやバスクラリネットに加え,色々な打楽器が活躍していました。曲は比較的ゆったりとしたテンポで始まり,クラクションの音に慌てふためく「パリ観光に来たお上りさん」的気分が出ていました。生き生きした気分を出していたクラリネットを始め,おっとりとした中にも冴えた気分のある演奏でした。 第3部のチャールストン風の部分は,フル編成オーケストラの実演で聞くと楽しいですね。ここでもトランペットが陽気にソリスティックに聞かせてくれました。最後のヴァイオリンのソロからテューバのソロに続く辺りでは,「旅の終わりの名残惜しさ」をしっかり伝えてくれました。 ちなみにちょうど今の時期,アラン・ギルバート指揮ニューヨーク・フィルハーモニックが来日公演を行っており,2014年2月13日には「パリのアメリカ人」を演奏していたようです。 http://www.suntory.co.jp/suntoryhall/schedule/detail/20140213_M_3.html 小松もニューヨークもオーケストラの名称としては「フィルハーモニック」でシャキっと終わっていますので,面白い偶然の一致ですね。 ↑2階席で聞きました。メンバー宛ての花束が沢山届けられていました。 後半の「新世界から」は,大変有名な曲ですが,管楽器がソリスティックに活躍する部分が多いので,特にアマチュア・オーケストラが演奏するのは,「実は,かなり大変」なのではないかと思います。今回の演奏は,2楽章のイングリッシュホルンのしっとりとしたソロをはじめ,決め所がしっかりが決まっており,まとまりの良い,とても立派な演奏になっていました。 第1楽章は低弦の透明感のある音で始まり,「新しいページのはじまり(これはキャンディードか?)」という感じの期待感を持たせてくれました。この楽章の第1主題をはじめ,ホルンが各所で活躍する曲ですが,難しいパッセージをくっきりと演奏しており,演奏全体に魂を込めているようでした。フルートに出てくる楚々とした主題も鮮やかでした。全体的に「堂々」というよりは「慎重」に感じられる部分もありましたが,珍しく呈示部の繰り返しを行っていたこともあり,「聞きごたえのある大交響曲」といった演奏になっていました。 ちなみにこの楽章については,私の場合,コーダの部分のトランペットの音に注目するのがなぜか習慣になっています。大昔,クラシック音楽好きの先輩が「○○指揮の演奏はトランペットがクレッシェンドをしていない。ゆるせん」と言っていたことをいつまでも覚えているからですが,今回の演奏は,しっかりクレッシェンドしていました。やはりこれがないと盛り上がりません。 第2楽章では,イングリッシュ・ホルンのさりげない表情にかえってウルっとしました。各楽器のバランスも良く,静けさと落ち着きに満ちた気分にしっかりと浸ることができました。楽章の最後の,弦楽器のトップ奏者たちによる「室内楽」的な部分もとても味がありました。 今回の演奏会のプログラムの解説はオーケストラのメンバーの方が分担して執筆されていましたが,「テューバはこの楽章の最初と最後の10小節しか登場しません」といった解説はとても面白いと思いました。思わず注目してしまいました(4楽章のシンバルの方は知っていたのですが)。 ↑レトロ・アメリカンの雰囲気のあるプログラム。機関車の写真はアンコール曲にも関連していますね。昨年の定期演奏会を収録したCDを\1000で販売していたので,お土産に購入。 第3楽章は小細工なくまっすぐに聞かせる演奏でした。トリオの部分でのフルートなどの木管楽器を中心としたリラックスしたムードも良いと思いました。コーダの部分は,全曲を通じてのメインテーマを金管楽器が回想するような感じになります。この部分は「がんばれ」という感じで妙に熱く応援を(心の中でですが)してしまいました。 第3楽章と第4楽章のインターバルはほとんどなく,そのまま堂々としたテーマが始まりました。金管楽器の音には気合いがこもっていて,高揚感を感じました。 ちなみに(余談が多くてすみません),第4楽章の第1主題の始まり方は「機関車が動き出す感じ」に似ていると言われていますね。演奏後,指揮者の野村さんが「ドヴォルザークも私も”鉄ちゃん”です」と語っていましたが,その「発車気分」にぴったりのテンポ感でドヴォルザークも草葉の陰(?)で喜んでいたのではないかと思いました。その他,映画「ジョーズ」のテーマもこの部分のパロディと言われていますが,これはまた別の話にしましょう。 いちばん最後の音は「長ーく」のばされ,静かに終わりました。この部分についても,大昔,「楽譜の指示は「長く(lunga)」となっているのに,○○指揮の演奏はあっさり終わって,手を抜いている」という文章を読んで以来,「長いのが良い」と思っているのですが,その指示どおりの演奏だったと思います。 アンコールでは,「アメリカ」つながり,というよりは「ドヴォルザーク=鉄道ファン」というつながりで,シュトラウスの「観光列車で」が演奏されました。この曲を聞くと,ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートでカラヤンやクライバーが楽し気にこの曲を指揮していたのを思い出します。今回の演奏も,リラックスした気分のあるとても良い演奏でした。指揮者の野村さんは指揮台でホイッスル(?)を吹きながら指揮されていましたが,「行楽日和」といった感じのちょっと緩めのテンポ感が曲想にぴったりでした。シュトラウス自身は「鉄道嫌い」だったそうですが,そうとは思えないような曲ですね。 小松シティ・フィルハーモニックの定期演奏会のプログラムは,アンコールの選曲も含め,毎年,ちょっとマニアックなひねりがあるのがいいですね。これからも,金沢では聞けないような,「こだわり」のプログラムを期待したいと思います。 PS. この日は車で小松に行きました。が,実は車で小松市内に行くのは苦手で,毎回迷います(みずから迷い込んでいるところもあるのですが)。 行きは加賀産業道路から適当なところで「小松空港」の案内に従って海側に曲がったのですが...結局,思っていた交差点(Book Offのある交差点(非常にローカルな話ですみません)に一発で出ることができませんでした。 帰りは帰りで,Book Offのある交差点から国道を金沢に向かって走った後,行きのリベンジを果たすため,加賀産業道路の方に行こうと思ったのですが...やはり迷ってしまい,なぜか手取フィッシュランドという想定外のところに出てしまいました。取りあえず,もう少し上流に行けば,川北大橋に出るだろう...と思ったのですが,なかなか川北大橋が出てきません。 私の場合,どうも判断が早過ぎるようで,待ちきれずに,川北大橋より下流の橋を渡ってしまいました。そこから先は,広々としているけれども迷宮のような(?)道を,山の方角を頼りに走り,何とか加賀産業道路に出ることができました。 問題は「カーナビがない」「地図もない」という点ですが...根本的には「方向音痴」なのです。 ↑道に迷ったせいで,ホール裏の駐車が満車でした。少し走ると,うまい具合に「コマツ」の無料駐車場があったので使わせもらいました(本当は違反dった?)。ホールの近くには,懐かしの「雷鳥」の車両が展示されていました。 ↑ホールの裏側。ホール内のお土産屋さん。ただし...何も買わず。 ↑ホールの隣の線路下にはスケートボード用の練習スペースがありました。現在,ソチ五輪では若いスノーボードの選手が活躍していますが,小松からも選手が出てくるとうれしいですね。 (2014/2/15) |