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石川県ジュニアオーケストラ 第20回記念定期演奏会
2014年3月23日(日) 14:00 石川県立音楽堂コンサートホール

1)ブラームス/ハンガリー舞曲第5番
2)アンダーソン/ジャズ・ピチカート
3)アンダーソン/シンコペーテッド・クロック
4)アンダーソン/トランペット吹きの子守唄
5)ロジャース(ベネット編曲)/「サウンド・オブ・ミュージック」セレクション
6)グノー/歌劇「ファウスト」のバレエ音楽〜第1,3,7曲
7)グリーグ/ピアノ協奏曲イ短調,op.16
8)(アンコール)ショパン/小犬のワルツ
9)(アンコール)サン=サーンス/組曲「動物の謝肉祭」〜終曲
10)(アンコール)グノー/歌劇「ファウスト」のバレエ音楽〜第5曲
●演奏
鈴木織衛指揮石川県ジュニアオーケストラ*1-7,10
宮谷理香(ピアノ*7-9),鈴木織衛(ピアノ*9),西田栞(トランペット*4)



Review by 管理人hs  

年度末恒例の石川県ジュニアオーケストラの定期演奏会を聞いてきました。今回は第20回記念ということで,金沢出身のピアニスト,宮下理香さんをゲストに招いての華やかな内容となりました。このオーケストラが出来てから,いつの間にか20年。人間で言うと成人式になるのか,と自分の子供のように感じてしまいました。



演奏会の前半はブラームスのハンガリー舞曲第5番など,気楽に楽しめる作品が中心でした。ルロイ・アンダーソンの曲ではオーケストラのメンバーが”ソリスト”として活躍しました。シンコペーテッド・クロックでは,小柄な打楽器奏者が指揮者の隣に出てきて,「カンコン,カンコン...」と時計のリズムを(途中シンコペーションしながら)しっかり刻んでいました。中間部で休みになる時には,指揮台に腰かけていたり,演技の方も楽しませてくれました。「トランペット吹きの子守唄」の方は,高校生のメンバーがソロを担当しました。ちょっとスリリングなところもありましたが,立派にソロを吹き切っていました。

前半最後のサウンド・オブ・ミュージックのハイライトはベネットによる編曲版で,有名な映画のサントラ盤に出てこない曲(オリジナルのミュージカルにだけ含まれている曲)も含まれていました。この名曲の初演当時のアレンジャーということで,正統的なサウンド・オブ・ミュージックだったと思います。

後半は,グノーの「ファウスト」のバレエ音楽の抜粋で始まりました。この曲も個人的に大好きな作品です。鈴木織衛さんの安心感のある流麗な指揮の下で,とても気持ちよく音楽に浸らせてくれました。

最後に今回のゲスト宮谷理香さんが登場し,グリーグのピアノ協奏曲を共演しました。協奏曲については,交響曲を演奏するのとはまた別の難しさがあります。ジュニアオーケストラにとってこの曲はかなりの難曲だったと思いますが,最終楽章のコーダでの力強い響きを初め,立派な演奏聞かせてくれました。冒頭部をはじめとしてティンパニの演奏がとても鮮やかでした。

宮谷さんのピアノもさすがで,カーンと冴えた,引き締まった演奏を聞かせてくれました。全体にすっきりとした表情があり,「北欧のショパン」といった感じの演奏だったと思います。ジュニアオーケストラのソロとピアノの絡みの部分は,少々冷や冷やする部分もありましたが,その緊張感もまた生演奏を聞く楽しみの一つです。

白夜を思わせる第2楽章,民族的な気分を持った第3楽章と各楽章ごとに,誠実で若々しい演奏を聞かせてくれました。

アンコールではまず,宮谷さんの独奏で小犬のワルツ(演奏の終盤のトリルの部分で,ちょっと汗を拭くパフォーマンスが入る手慣れた演奏),続いて宮谷さんと鈴木さんによる連弾でサン=サーンスの「動物の謝肉祭」の終曲が演奏されました。サン=サーンスの方は,”デュオ・セイリセイトン”というネーミング(お2人とも整理整頓好きなのだそうです)どおり,キッチリとした気持ちよい演奏でした。

最後にジュニアオーケストラによる演奏で,グノーの「ファウスト」バレエ音楽の中の2曲目のワルツが演奏されました。滑らかでゆったりとした演奏で,演奏会を気持ちよく締めてくれました。

石川県ジュニア・オーケストラの活動は,OEKを中心とした石川県のオーケストラ文化を育て,維持していく上で,非常に大切な役割を担っていると思います。今後もOEKとの2本柱のような感じで石川県立音楽堂で活動を続けていって欲しいと思います。


土日のコンサートの場合,晴れていると音楽堂の階段のところにあるステンドグラスが美しく見えます。

(2014/3/29)