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つのだたかし「小屋に捧げるリュートの夕べ」:「中村好文 小屋においでよ!」関連プログラム
2014年5月31日(土)19:00〜 金沢21世紀美術館光庭

I イタリアのトッカータと舞曲より
1)カプルベルガー/トッカータ第6番
2)作者不詳/シチリアーナ
3)ネグリ/ガリアルダ
4)パルマ/コレンタ

II シェイクスピア時代の流行歌
5)いとしい人,窓から帰って
6)ケンプのジグ
7)運命
8)ウィロビー卿のご帰館
9)グリーンスリーヴズ

III フランスの舞曲
10)女王のバレー
11)アントレ
12)村の踊り(パラール)

IV ジョン・ダウランドのリュート音楽
13)ウィンター夫人のジャンプ
14)靴屋の女房
15)ハンスドン夫人のパフ
16)涙のパヴァーヌ(ラクリメ)
17)ファンシー

18)(アンコール)曲名不明  ※ 2)〜12)については聞いていません。上の写真のプログラムを転記してものです。

●演奏
つのだたかし(リュート),中村好文(歌*18)

Review by 管理人hs  

金沢21世紀美術館で行われている建築家・中村好文による「中村好文 小屋においでよ!」の関連企画として行われた「つのだたかし「小屋に捧げるリュートの夕べ」」を聞いてきました。

この企画は,夕暮れの薄暮の中,中村さんの作った小屋が設置されている光庭で,皆で一緒にリュートを聞きましょうというイベントです。それほど大きく宣伝していなかったので,ごれぐらい人が集まるのだろう?と思いながら出かけてみると...大勢の人が集まっていました。



というわけで,もう少し早く来れば良かったと後悔しました。今回私は,光庭の後方に追加された補助席で聞いたのですが,トークも含め,正直なところ音がほとんど届きませんでした。それだけリュートという楽器の音量が小さかったからなのですが,美術館内の音が入口からかなり入って来ていたので,ここを締めればもう少し聞こえたのではないかと思いました。

まず演奏会に先立ち,中村さんの挨拶がありました。今回,中村さんが設計した小屋は鴨長明の暮らしていた”方丈”を意識した部分もあるようです。この鴨長明は琵琶の名手だったそうで,その”方丈”にも琴と琵琶が置かれていました。中村さんは,リュート奏者のつのだたかしさんと以前から親交があったこともあり,今回は琵琶をリュートに見立てた”小屋に捧げる”演奏会を「展覧会期間中に是非やりたかった」ということで,今回のイベントが実現しました。


この小屋の後ろで,つのださんはリュートを演奏していました。


小屋の中にはリュート?のケース。 夕暮れの空が美しかったですね。

ただし,演奏が始まっても私の座席からだと演奏している様子が見えないし,音も微かにしか聞こえないので,美術館の展覧会を一回りしてから,もう一度来てみることにしました。

現在,21美では次の2つの展覧会などを行っていますが,この日は”小屋のまわり”のレアンドロ展の方を見ました。

 いちばん右が「小屋においでよ!」のポスター

まずは「タレルの部屋」へ。右の写真は,レアンドロ展会場から「小屋」を見たもの。
 

レアンドロ展では,”錯覚”系の展示がいろいろありました。気軽に楽しめます。右はガラスに自分を反射させて”ピアノ四重奏”を演奏するというもの。他のお客さんの”室内楽”に参加してきました。モーツァルトのピアノ四重奏曲が流れていました。
 

おなじみレアンドロのプール。右側は展覧会入口のサイン。
 

左はレアンドロ展ではなく,西沢&妹島さんによる作品。ガラスを通すといつもの風景が歪んで見えます。右は21美の夜景。この日は空が美しかったですね。
 

さた光庭に戻ってみると,小さなお子様たちは少なくなっており,夜空が暗くなったこともあり,どこか落ち着いたムードになっていました。



それでもお客さんは沢山残っていました。つのださんが楽器について説明をされていました。
 

この時は光庭への入口を締めていたのですが,そうするとリューとの音がかなりしっかりと聞こえてきました。光庭のドアを閉めると,光庭自体が「室内」となります。やはりリュートは野外用ではなく室内用の楽器なんだなと思いました。

私が戻った時はちょうど最後の「ジョン・ダウランドのリュート音楽」のコーナーでした。同じような雰囲気のゆったりとした音楽が静かに続く中,頭上の空の色だけが段々と濃くなっていく...というのは得難い経験でした。バッハのヨハネ受難曲の最後の方に,リュートが効果的に登場する曲があります。実演で聞いた時,その部分だけは空気が甘くなっているような感覚を持ったことがあります。今回の演奏を聞きながらそのことを思い出しました。「永遠に続く,晴れた夕暮れの甘美な時間」を演出する楽器と言えそうです。

演奏の最後の方で,「小屋」の中の鳩時計が素朴に「夜8時」を告げていましたが,これもまた一興でした。デジタルのアラーム音が鳴ったらこういうわけにはいきませんね。

 
小屋の中の様子です。こういう部屋に住んでみたいと思いますが...自宅でやるには,まずは断捨離が必要かも。やはり別荘として欲しいですね。

 小屋の中にあった本。方丈記もありました

最後,「アンコール」で中村さんの歌,つのださんの伴奏で,オールディーズのアメリカン・ポップスっぽい曲が演奏されました。聞いたことはあるのですが,曲名を聞き取ることができませんでした。「トワイライト」という言葉が何回も出てきていたので,それに関する曲だと思います(ただし,プラターズの「トワイライト・タイム」ではありません)。中村さんはとても良い声で,気持ち良い生声が夜空に向かって広がっていました。

 お開きになった後の写真

PS 「休日の夕暮れの音楽」と言えば,「笑点」「サザエさん」ですが,その代わりにリュート音楽でも聞けば,かなり心持ちが変わってくるかもしれませんね。

PS 今回の展覧会の「小屋においでよ!」というネーミングは,ローズマリー・クルーニーとか日本語版だと江利チエミなどが歌っていた「家においでよ!」のパロディですね。中村さんは,結構,この時期のアメリカン・ポップスが好きなのかもしれませんね。

 
これは開演前に撮影した写真。この日は夕焼が美しかったですね。真ん中に写っているのは北國新聞社のビルです。

(2014/5/25)