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台北愛楽少年室内楽団&石川県ジュニアオーケストラ 文化交流コンサート
2014年8月3日(日)14:00〜 石川県立音楽堂コンサートホール



1)ケ雨賢(李哲藝編曲)/望春風
2)宜蘭民謡(李哲藝編曲)/**銅仔(*うまく表示されませんのでリンク先でご確認ください。Diu Diu Tong Zaiと発音)
3)ベートーヴェン/交響曲第7番イ長調op.92〜第4楽章
4)グノー/歌劇「ファウスト」バレエ音楽〜第1曲「ヌビア人の踊り」
5)コルンゴルド/バレエ音楽「雪だるま」(抜粋)
6)外山雄三/管弦楽のためのラプソディ(後半)
7)ベートーヴェン/交響曲第7番イ長調op.92〜第1楽章
8)杉本竜一(杉本竜一詞,福嶋頼秀編曲)/ビリーブ
9)菅野よう子(岩井俊二詞,,福嶋頼秀編曲)/花は咲く
10)シャーマン,R.M,シャーマン,R.B.(小野崎孝輔詞,小森昭宏編曲)/小さな世界
11)スッペ/喜歌劇「軽騎兵」序曲
12)(アンコール)ブラームス/ハンガリー舞曲第5番
●演奏
劉柏宏*1-3, 鈴木織衛*4-12指揮
台北愛楽少年室内楽団*1-3,11-12, 石川県ジュニアオーケストラ*4-6,11-12, オーケストラ・アンサンブル金沢*7-12
合唱:OEKエンジェルコーラス*8-10, 台北愛楽少年室内楽団*10, 石川県ジュニアオーケストラ*10
司会:山田彰子



Review by 管理人hs  

夏休み期間中,石川県立音楽堂では子供たちが演奏者としてステージに登場する,親子で楽しめるイベントをいろいろ行っています。交流ホールでは「ふれあい伝統芸能ランド」として,日本の伝統芸能を気軽に体験できるイベントを行っていましたが,私の方はそちらの方には参加せず,台北愛楽少年室内楽団と石川県ジュニアオーケストラを中心とした「文化交流コンサート」を聞いてきました。台北のジュニアオーケストラと石川県のジュニア・オーケストラの共演ということになります。今回は後半,OEKエンジェルコーラス,そして,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)も演奏に加わり,かなりの大編成による演奏となりました。

 

今回,文化交流のために来日した台北愛楽少年室内楽団(どう発音するのか分かりませんが)は,少年という名前が入っていますが,女の子もたくさん入っているジュニア・オーケストラです。石川県とどういうつながりがあり,どういう経緯で今回金沢で公演を行うことになったのか不明ですが,台湾と小松空港の間には定期便がありますので,今後の互いの友好関係を強化することが目的なのかもしれません。

演奏会はいくつかのコーナーに分かれていました。まず,台北愛楽少年室内楽団,続いて,石川県ジュニアオーケストラによる単独演奏があり,それぞれの国の民謡をモチーフにした曲と通常のクラシック音楽とを演奏しました。

最初に演奏された台湾民謡には,どこか懐かしい日本の唱歌のような雰囲気がありました。1曲目の方はのどかでおおらかな曲,2曲目の方は鉄道を描写するようなテンポのよい曲でした。特急というよりはアジアのローカル鉄道といったエキゾティズムがありました。ベートーヴェンの交響曲第7番は,さすがにジュニア・オーケストラが演奏するには大変な曲ですが,OEKメンバーのサポートもあり,しっかりと聞かせてくれました。

石川県ジュニア・オーケストラの指揮は鈴木織衛さんでした。おなじみのグノーの「ファウスト」バレエ音楽の第1曲が流麗に演奏された後,コルンゴルトの「雪だるま」の一部が演奏されました。その夢見るような上品なロマンティックさは,コルンゴルト10歳の時の作品とは「信じられない」素晴らしさでした。ジュニア・オーケストラのメンバーにとっても大きな刺激になったのではないかと思います。この曲にはヴァイオリンの独奏も入るのですが,ジュニア・オーケストラのコンサートミストレスがしっとりと聞かせてくれました。

その後,外山雄三の管弦楽のラプソディの終盤(つまり「八木節」)が演奏されました。この曲を聞くのは久しぶりでしたが,打楽器が和太鼓風に活躍するので,聞いていて血が騒ぐようなところがあります。全曲が終わった後,メンバーが全員起立して,「ヤー!」という雰囲気で締めてれました。

# 余談ですが,高校野球の吹奏楽の応援では,アフリカンシンフォニーばかり使っているけれども,曲のリズム的には八木節を使っても良いのではないかと思ったりしました。どこか使わないでしょうか?

演奏会の後半はまず,OEK単独でベートーヴェンの交響曲第7番の第1楽章が演奏されました。とても流れのよい引き締まった,「さすが」という演奏でした。

続いて,OEKエンジェルコーラスが加わり,「ビリーブ」と「花は咲く」が演奏されました。エンジェルコーラスの「やさしい声」が両曲の気分によく合っていました。

「花は咲く」は,このところとてもよく演奏されますが,今回の編曲は特に良かったと思いました。合唱が入る前のオーケストラだけの部分で,グッときました。管楽器に続いて弦楽器が落ち着いた感じで入ってくると,それだけで優しい気分になります。その上に児童合唱が加わり,さらに聞きごたえと感動が増していました。

ここからが,この日のハイライトでした。「子供たち全員勢ぞろい」で「小さな世界(この曲の場合,ディズニーの「イッツ・ア・スモール・ワールド」と言った方が分かりやすいかもしれませんね)」が演奏されました。ただし,ジュニアオーケストラのメンバーは楽器を演奏するのではなく,合唱で参加しました。台湾ジュニアが下手側,石川ジュニアが上手側,エンジェル・コーラスがステージ奥という配置で,1番は日本語,2番は中国語,3番は英語で歌うという趣向でした。最後の部分は,モーツァルトの「ジュピター」交響曲の最後の部分のように,いろんな言語が立体的に混ざり合っていました。これはとても良い光景でした。

演奏会の最後は,両ジュニアオーケストラにOEKが加わった超大編成オーケストラでスッペの「軽騎兵」序曲が演奏されました。最初のトランペットのファンファーレから(何人トランペットがいたのだろうか?ヤナーチェクのシンフォニエッタを演奏できるぐらいいた?)気持ちよい音が鳴り響いていました。弦楽器の響きも厚く,大変聞きごたえがありました。大編成だけれども,重苦しくなく,全体が引き締まっていたのが良かったと思います。

アンコールでは,ブラームスのハンガリー舞曲第5番が演奏されました。こちらもテンポの動きの大きな作品ですが,特に弦楽器がゆっくり加速していくような感じは大編成ならではだったと思います。巨体の恐竜がヌーッと動くような面白さがありました。

台湾では,石川県出身の技術者,八田與一が偉人として尊敬されていますが,そのつながりもあり,石川県のいくつかの高校の修学旅行のコースになっています。反対に台湾から石川県を訪れる観光客も増えているようです。金沢では,毎年,アジアの若手音楽家を中心としてた,いしかわミュージックアカデミーのような国際的な講習会も行っていますので,これからも,こういった演奏会を通じて,若い人たちによる音楽面での交流を進めていってほしいと思います。

PS. この日の中国語の通訳の方は,結構,日本語がたどたどしいところがあったのですが,そのイントネーションが「どこか金沢弁」な感じでした。ちょっと微笑ましく感じました。

PS イベントには参加しなかったのですが,「ふれあい伝統芸能ランド」の様子もよく見えました。
  

 

(2014/8/9)