バレエウィーク2014「くるみ割り人形」
2014年12月6日(土)14:00〜 石川県立音楽堂コンサートホール |
チャイコフスキー/バレエ「くるみ割り人形」(全幕)
●演奏
佐藤正浩指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサートマスター:サイモン・ブレンディス)
構成・演出:マレック・テュマ,バレエマスター:アリエル・ロドリゲス
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バレエ:ドイツ・エッセン市立歌劇場バレエ(ユリア・ツォイ(マリー),アンナ・カム,ジナ(金平糖の女王),ドミトリー・カムジン(ウィルヘルム,コクリューシュ王子),アルメン・ハコビヤン(客人,アラビアの踊り),トーマス・オティッチ(シュタールバウム,ネズミの王様,花のワルツ),ヴィアチェスラフ・チュチューキン(くるみ割り人形),リアム・プレイヤー(客人,花のワルツ),クィングビン・メン(客人,花のワルツ),デイヴィット・ジェイランヤン(ドロッセル・マイヤー),ワタル・シミズ(フリッツ,トレパック)
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石川県立音楽堂特別編成バレエ団(横倉未緒(雪の女王),巻孝明(雪の王様,あし笛の踊り),土中梢(アラビアの踊り),徳山凛(あし笛の踊り),高島怜美(ギゴーニュママ) 他)
協力:エコール・ド・ハナヨ・バレエ,金丸明子バレエスタジオ,K・バレエスタジオ,高橋英子バレエスタジオ,永井与志枝バレエスタジオ,平田朋子バレエクラス,横倉明子バレエ教室,ロドリゲスバレエスクール
児童合唱:OEKエンジェルコーラス
今年の12月,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)は1週間内に行われる2つのバレエ公演の演奏を担当しました。公演のタイトルにあるとおり「バレエ・ウィーク」ということになります。この冬いちばんの雪の中,その第1弾,バレエ「くるみ割り人形」を石川県立音楽堂で観てきました。
「くるみ割り人形」は,世界的に年末公演の定番となっていますが,金沢ではドイツ・エッセン市立歌劇場バレエ団のメンバーと石川県内のダンサーの混成チームによる上演が定着してきてます。今回もまた,ホールいっぱいに溢れる,ダンスと音楽による幸せなステージを楽しんできました。
「くるみ割り人形」は,チャイコフスキーの他のバレエに比べると上演時間が短く,子供たちが沢山出演する作品です。今回,土曜日の午後に上演されたのは正解で,会場は沢山の親子連れが集まっていました。
「くるみ割り人形」は過去数回観ているのですが,見るたびに名作だなと思います。実は,私がクラシック音楽を聞き始めるきっかけになったのが,小学校高学年の音楽の時間に聞いた,このバレエの組曲版です。ついつい自分自身の子供の頃とも重ねてしまうのですが,音楽自体にそういうノスタルジックな気分が漂っている点で,大人でも楽しめるバレエとなっているのではないかと思います。
今回の指揮は佐藤正浩さんでした。佐藤さんの指揮でバレエ公演を聞くのは今回が初めてだったのですが,小序曲から,大変じっくりとしたテンポで,全曲を通じてどっしりとした落ち着きや安心感を感じました。恐らく,ダンサーたちも踊りやすかったのではないかと思います。
第1幕が始まると,シュタールバウム家の応接間の場面になります。「くるみ割り人形の役名」には,いくつか流儀があるようですが,今回の演出は2010年の金沢公演同様マレック・テュマで,主役の少女の役名はクララではなく,マリーとなっていました。「行進曲」の場面でも子供たちの姿はなく,大人中心の落ち着いた雰囲気がありました。そのせいか,この辺までは会場内にやや堅い雰囲気が漂っていましたが,バネ仕掛けの人形の踊りの部分になると,ようやく拍手が入り,ムードが盛り上がってきました。
第1幕後半,夜が更けて,クリスマスツリーが巨大化し,マリーが夢の中に入っていくのですが,この部分の演奏が素晴らしいと思いました。コンサートホールでの上演ならではの聞きごたえがありました。
ネズミ軍とくるみ割り人形軍の戦争の部分は,様式的な「群舞的戦い」ですが,打楽器などの生音の迫力が素晴らしく,ドラマが生き生きと展開していきました。ただし,この勝負どちらが勝ったのか,やや分かりにくい気がしました。
この場面で,くるみ割り人形が「お面」を被って出てきた時は「!」という感じでしたが,戦いが終わって,くるみ割り人形が「リアルな王子」に変身すると,「なるほど」と納得します。その後,この王子とマリーのダンスになります。シンプルなステージに後期ロマン派的な気分が漂い,現実感のない素晴らしくロマンティックなシーンとなっていました。
その後,さらにコールド・バレエになっていく辺りの堂々とした盛り上がりも大きな見せ場になっていました。OEKエンジェルコーラスが加わる「雪片のワルツ」の部分は,「待ってました」という感じで毎回楽しみにしています。ステージ奥のスクリーンの背後のパイプオルガンステージに児童合唱が待機しており
石川県立音楽堂ならではの演出で,感動します。「アーアーアーアアー」の声が聞こえてくると,分かってはいるけれどもウルっとします。
第2幕の方はディヴェルティスマンということで,本当に気楽に楽しむことができます。こういう時間はずっと続いてほしいなぁと思うのですが,次々とお菓子をモチーフにしたお馴染みのダンスは「アッ」という間に終わり,「花のワルツ」になりました。石川県のダンサーたちをがエッセンのダンサーたちとしっかり絡みながら,みずみずしく,時に微笑ましいステージを作っていました。
「花のワルツ」はそのクライマックスということで,大人数によるダンスには特に幸福感に溢れていました。OEKの演奏にも作為的なところがなく,こちらにも自然な幸福感が漂っていました。
最後に金平糖の精と王子(もう一人王子が出てきます)によるグラン・パ・ド・ドゥは「待ってました」という感じの部分です。エッセンのバレエ団メンバーによる切れ味の良さと繊細さとを兼ね備えたダンスはお見事でしたが,最後のコーダの部分では,もう少し華やかに回転をしてくれるのかなと思っていたのでちょっと地味に感じました。
そして,最後に全員のダンスになります。音楽堂のステージはそれほど広くないので踊りにくい部分はあったかもしれませんが,「大勢でクルッと回る」という光景を見るだけで,嬉しくなります。
最後は,眠っていたマリーが夢から目を覚まして,おしまいとなるのですが,何かとても後味の良い終わり方だと思いました。古典的なバレエについては,あれこれひねった解釈をして,「よくわからない」終わり方になることもありますが,今回の「くるみ割り人形」は,本当に分かりやすいと思いました。楽しい夢から目が覚めても,その余韻がまだ残っているような感じで,「今日は良いことがありそう」と前向きな気分にさせてくれました。
カーテンコール(コンサートホールなので,リアルなカーテンはありませんが...)には次々と登場したダンサーたちが出てきて,楽しい雰囲気がさらに盛り上がるようでした。終演後,エッセンのダンサーたちのサイン会が行われましたが,これにも大勢の人が参加していました。特に小学生ぐらいの子供たちが沢山列に並んでいて,ダンサーたちと記念撮影をしていたのが,とても良い雰囲気でした。
OEKが石川県立音楽堂で活動をするようになって,多方面に広がりが出てきているのですが,この年末バレエ公演もその「広がり」の一つだと思います。エッセン+地元ダンサー+OEKによる親しみやすい「くるみ割り人形」というのもまた,OEKの財産になって来たのではないかと思います。毎年は難しいと思いますが,また,数年後に期待したいと思います。
PS. この日は,開演直前に「雪のため開演を少し遅らせます」というアナウンスがありました。冬季の公演の場合,これからはこういうケースが増えそうですね。
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以下は,新幹線を待つ,雪の中のJR金沢駅周辺の写真です。
開業まで100日を切りました。有人改札も今のうちに撮影しておきました(全部はなくならないと思いますが)。

金沢百番街の入口にあった,クリスマス向けの撮影スポット。右はもてなしドームの屋根です。つい屋根雪を確認したくなります。

ホテル日航もANAホテルも何となく雪の中に霞んでいました。
(2014/12/14)
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バレエウィークの立看板
こちらは両公演の案内

音楽堂玄関のクリスマスツリー。「くるみ割り人形」公演にぴったりです。

交流ホールは,準備用のスペースになっていました。

やはりレッスン用のバーは不可欠なんですね。

音楽堂内のクリスマス飾り

外は,第1幕切れ同様,雪片が舞っていました。
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