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ラ・フォル・ジュルネ金沢 「熱狂の日」音楽祭2014 プラハ,ウィーン,ブダペスト:三都物語
2014年4月29日〜5月6日 石川県立音楽堂,金沢市アートホール,JR金沢駅周辺,金沢市内各地

Review by 管理人hs  

2014年4月29日(火祝)

■音楽祭開幕ファンファーレ
11:00〜 JR金沢駅コンコース

今年もラ・フォル・ジュルネ金沢2014熱狂の日音楽祭が開幕しました。午前11:00にJR金沢駅で金沢大学フィル演奏で始まった...ようなのですが,実は遅刻してしまい,11:05頃から聞き始めました。その時,演奏していたのはドヴォルザークの交響曲第9番「新世界から」の第4楽章でした。



やはりフル編成のオーケストラが駅の構内で演奏しているというのは驚きの光景で,観光客も巻き込んで,大賑わいでした。金大フィルの演奏は,堂々たるテンポによる演奏でした。私は金管楽器,打楽器の横で聞いていたのですが,こういう状態で聞けるのもラ・フォル・ジュルネならではです。

配布していたチラシによると,その他に次のような曲を演奏していたようです。

ベートーヴェン/「エグモント」序曲
ドヴォルザーク/スラヴ舞曲第8番
ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界から」〜第4楽章
●演奏
金沢大学フィルハーモニー管弦楽団

この日の金沢は,ラ・フォル・ジュルネにしては珍しく,今にも雨が降って来そうな天気でした。今年不在の井上道義さんは,やはり「晴れ男」だったようです。





■街なかコンサート
12:30〜 JR金沢駅コンコース

オープニング・ファンファーレを聞いた後,一旦自宅に戻り,再度,オープニング・コンサートを聞いてきました。こんなことは東京のLFJではなかなかできないと思います。14:00の演奏会の前に,再度JR金沢駅に行ってみると,金沢大学フィルによる「新世界から」をもう一度演奏していました。お客さんの数は11:00の時同様,大賑わいでした。




この時は,チラシによると,その他に次のような曲を演奏していたようです。

ベートーヴェン/「エグモント」序曲
ドヴォルザーク/スラヴ舞曲集〜第10番,8番
ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界から」〜第4楽章
●演奏
金沢大学フィルハーモニー管弦楽団


その後,石川県立音楽堂の方に向かうと,何やら軽快な音楽が...。



プログラムに書かれていないゲリラ・ライブが音楽堂前に登場するのもラ・フォル・ジュルネ金沢ならではです。演奏していたのは,ハンガリー・ジプシー・トリオの皆さんでした。民族音楽というよりは,普通のジャズのトリオの演奏でしたが,やはりヴァイオリンが入っている点がハンガリー的なのかもしれません。これから一週間,色々なところでお目にかかりそうです。



■【011】 オープニングコンサート
14:00〜 石川県立音楽堂コンサートホール

1)シュトラウス,J.II/喜歌劇「こうもり」序曲
2)ドヴォルザーク/歌劇「ルサルカ」〜月に寄せる歌
3)ワーグナー/楽劇「タンホイザー」〜崇高な殿堂よ
4)ブラームス/ハンガリー舞曲集〜第1番,第5番
5)ドヴォルザー/交響曲第9番ホ短調, op.95「新世界から」〜第4楽章
●演奏
金聖響指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサートマスター:アビゲイル・ヤング),金沢大学フィルハーモニー管弦楽団メンバー*5, 竹多倫子(ソプラノ*2,3)
司会:池辺晋一郎,ゲスト:桂米團治


コンサートホールでは,オープニングコンサートに先立ち,開会セレモニーがありました。ラ・フォル・ジュルネ金沢は,チケットの売り上げに加え,石川県,金沢市,地元企業による財政的な支援で行われています。LFJK実行委員会の前田利祐会長の挨拶の中でも,まずなによりも財政的に大変であることについて触れていました。その後,谷本石川県知事,山野金沢市長の挨拶が続きました。東京のラ・フォル・ジュルネにはこういうセレモニーはないと思うのですが,年に1回,気合いの入った声を聞くのも,ラ・フォル・ジュルネ金沢名物(?)になりつつあります。「来年は新幹線...」という言葉が目立ち過ぎていた気もしますが,実際,来年のLFJKがどういう雰囲気になるのか,注目したいところです。

山野市長は,あいさつの中で「ウィーン,ブダペスト....もう一つは....」とプラハをど忘れしてしまったのですが,池辺さんの「チェコっと忘れましたね」といった絶妙の突込みもあり,和気あいあいとしたムードで終わりました。

演奏会は,シュトラウスの「こうもり」序曲で始まりました。井上道義さんに代わって,急遽登場することになった金聖響さん指揮OEKの演奏は大変軽やかな演奏でした。井上さんだったらもっとタメを作りそうな部分がサラリとしていたり,個人的にはもう少し濃い演奏の良いかなという部分もありましたが,気持ちよく音楽祭が始まりました。

続いて,金沢市出身のソプラノ歌手,竹多倫子さんが登場しました。竹多さんは,昨年の日本音楽コンクールの声楽部門で1位を取った期待の歌手です。ドヴォルザークのルサルカとワーグナーのタンホイザーのアリアを歌われましたが,発声自体に常に余裕があり,豊かさのある素晴らしい歌を聞かせてくれました(竹多さんの出演する演奏会については,後日,邦楽ホールで歌う公演も聞いてきました。そちらの方ではさらに声の迫力を楽しむことができました。別途紹介しましょう。)。

歌い終わった後の池辺さんからのインタビューに対し,「歌い終わって爽快です」と本当に晴れ晴れとした声で堂々と答えていました。歌唱面だけではなく,キャラクター的にも素晴らしい方だと感じました。次回以降,LFJKの常連として活躍して欲しいと思います。

ハンガリー舞曲の第1番と第5番が,若々しく演奏された後,サプライズゲストとして桂米團治さんが登場しました。米團治さんは,この日,17:00からの「フィガロの結婚」(ハイライト)のPRを兼ねて登場していました。このハイライト公演は残念ながら聞けなかったのですが,ラ・フォル・ジュルネのフォーマットに合せるための良いアイデアだと思うので,金沢名物にしていっても面白いと思います。

さて,演奏会の方ですが,最後に金沢大学フィルの弦楽メンバーが編成に加わり,「新世界から」の第4楽章が演奏されました。米團治さんは,「聖響さんも私も大阪出身ですが,次の曲も大阪に関係あります。通天閣のある...「新世界」です」という感じで曲を紹介されていました。この日の池辺さんは,あまりにもポンポンとダジャレを連発していたので,「(落語家の私が)やっと面白いこと言えた」とホッとしていました。

ちなみに今日の11:00以降,この楽章を聞くのは3回目だったのですが,やはりコンサートホールでの大編成の演奏が最高ですね。駅での金大フィルの演奏の時は,ホルンの高音が2回とも「ガンバレー」という感じだったのですが(本当に4楽章のこの高音はホルンの難所ですね),今回はOEKの金星さんが見事に決めてくれました。金聖響さんの指揮ぶりは,非常にストレートで,曲の迫力がスムーズに瑞々しく伝わってきました。「やっぱ「新世界」はええなぁ」という感じの演奏でした。

というようなわけで,石川県立音楽堂と金沢駅周辺は,音楽祭初日から音楽の溢れる,華やかな良い雰囲気に包まれていました。



↑恒例の辻口さんのスイーツも販売していました。来年は朝の連続ドラマ関連もあるので,さらに話題を集めそうですね

(2014/5/19)