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OEKおしゃべりクラシック「金管で奏でるヴァレンタイン」
2015年2月7日(土) 14:00〜 石川県立音楽堂交流ホール

デュカス/舞踏詩「ラ・ペリ」のファンファーレ
サティ/ジュ・トゥ・ヴ
アンダーソン/トランペット吹きの休日
アーレン/映画「オズの魔法使い」〜虹の彼方に
フィルモア/Shoutin' Liza Trombone
コスマ/枯葉
ロジャース/ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」〜サウンド・オブ・ミュージック,エーデルワイス,ドレミの歌
バーンスタイン/ミュージカル「ウェストサイド物語」〜マリア,トゥナイト,アイ・フィール・プリティ
(アンコール)クリスティン・アンダーソン=ロペス,ロバート・ロペス/映画「アナと雪の女王」〜「Let it go:ありのままで」
(アンコール)ファッツ・ウォーラー/Lookin' Good But Feelin' Bad

●演奏
藤井幹人,堀田実亜(トランペット),金星眞(ホルン),中村友子(トロンボーン),木村徳仁(テューバ)


Review by 管理人hs  

この日の金沢は2月には珍しい晴天でした。JR金沢駅では北陸新幹線の試乗会を行っていましたが,その期待感に溢れる雰囲気の中,石川県立音楽堂交流ホールで行われた「OEKおしゃべりクラシック:金管で奏でるヴァレンタイン」という金管五重奏の演奏会を聞いてきました。

 

「OEKおしゃべりクラシック」シリーズは朝日新聞社,北陸朝日放送と石川県音楽文化振興事業団の共催で,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のメンバーのトークを含めて室内楽編成で1時間以内程度の演奏会を行うものです。OEKのもう一つの「室内楽シリーズ」でも金管楽器だけというコンサートは少ないので,貴重な機会です。散歩も兼ねて聞いてきました。

この日登場したメンバーは,この演奏会の前日に行われたOEKのファンタスティック・クラシカルコンサートにエキストラで出演していた金管楽器奏者3人とOEKの藤井さん,金星さんという5人でした。トランペット2,ホルン1,トロンボーン1,テューバ1ということになります。

ほぼ一人ずつの編成ということで,間近で聞く室内楽シリーズらしく,各楽器の音の絡み合いやメロディの受け渡しなどをしっかり聞くことができました。各楽器の音が語るように聞こえたり,歌うように聞こえたり,各楽器のソロをメインに据えた曲があったり,バラエティに富んだ演奏を楽しむことができました。

今回演奏された曲は,親しみやすい曲ばかりでした。まず,「ペリ」のファンファーレでパリっと始まりました。続いて,ヴァレンタインにちなんで,サティの「ジュ・トゥ・ヴ」が演奏されました。今回の演奏会には「ヴァレンタイン」という言葉が入っていますので,この手の曲をプログラムに入れるのは”お約束”ですね。室内楽編成を生かして,トランペット,トロンボーン,ホルンが3人で親しげに対話をしているような雰囲気のある演奏でした。

その後は,メンバー紹介と楽器紹介を兼ねて,それぞれの奏者がトークを行った後,その人が中心となる曲が演奏されていきました。

まずトランペットの堀田さんです。堀田さんは現在,ドイツのドルトムント歌劇場のトランペット奏者とのことです。「ドルトムントといえば,サッカーの香川選手。ドルトムントには8万人収容のスタジアムがあり,それが満席になる。サッカーの街です」とのことでした。そして,2月14日に結婚されるとのことでした。この日の演奏会は,堀田さんのための「ヴァレンタイン・コンサート」という感じですね。

演奏されたのは,おなじみの「トランペット吹きの休日」でした。堀田さんと藤井さんの「ツートップ」による演奏で,軽快に聞かせてくれました。余談ですが,この曲を聞くといつも,「トラペット吹きは休みどころではないなぁ」と思ってしまいます。オーケストラの奏者的には,「休日は,指揮者なしで思い切り吹ける」といった感じなのでしょうか?

次はホルンの金星さんのコーナーでした。金星さんは楽器紹介として,「ホルンはいちばん難しい楽器と言われています。そして,ホルン奏者は神父さんよりも確実に天国に行けると言われています。それは,神父さんの説教の時,大勢の人は寝ているけれども,ホルン奏者の出番の時は皆が祈っているからです」というジョークを紹介したのですが...やや反応が薄かったかもしれません。私の隣に座っていた人には,とっても受けていたんですが...。演奏されたのは,おなじみの「虹の彼方に」でした。空に登っていくようにグリッサンド(呼び方は違っているかもしれませんが)するのが,格好良い演奏でした。

続いてトロンボーンの中村友子さんのが「Shoutin' Liza Trombone」を演奏しました。「おしゃべりトロンボーン」といった感じ曲でした。最初「ハレルヤ・コーラス」のような感じで始まった後,「いつもより多めにグリッサンドしています」という感じで,トロンボーンが得意とするグリッサンドを連発し,楽し気なおしゃべりが続きました。中村さんは,360度ぐるっと回りながら,サービス精神たっぷりの演奏を聞かせてくれました。

最後にテューバの木村徳仁さんが「枯葉」を演奏しました。木村さんは大阪出身で,「昨日のコンサートでは笑いのツボが少し違うな」と感じたとのことでした。今回演奏された「枯葉」は,ジャズ版の「枯葉」を意識した演奏で,「重いけれども粋」な演奏を聞かせてくれました。

演奏会の後半は,「サウンド・オブ・ミュージック」と「ウェストサイド物語」の中から3曲ずつが演奏されました。「メドレー」ではなく,各曲ごとにインターバルが入っていましたが,3曲セットで丁度よいまとまりになっていたと思いました。

「サウンド・オブ・ミュージック」では,「ドレミの歌」の明快さが特に良いと思いました。この曲はもともと,子供たちによるアンサンブルの曲なので,今回のような室内楽編成による演奏に合うと思いました。

「ウェストサイド物語」は,「マリア」で始まりました。金星さんのホルンの音が人の声のように聞こえ,「深い思い」が伝わってきました。「トゥナイト」はトランペット2人の対話が良いと思いました。最後の「アイ・フィール・プリティ」にはいかにも金管楽器らしい,軽快な明るさがあり,全曲をピシッと締めてくれました。

金管アンサンブルの場合,オーストリアのアルプスの雰囲気にも合うし,ニューヨークのダウンタウンの雰囲気にも合います。特にジャズの要素もある,ウェストサイド物語にはぴったりだと思いました。

最後にアンコールが2曲演奏されておしまいになりました。

1曲目の「アナ雪」は,後半のミュージカルとの流れからして,「多分そうかな?そうあってほしい」と思っていたのですが,その予想どおりでした。この日はライティングにも工夫がされており,ステージ背景の布が”氷”っぽくなっていたのが良いなぁと思いました。この曲は短い中に色々な曲想が盛り込まれているのが素晴らしいと思います。最後に伸びやかに「レリゴー!」と解放されるのですが,今回生で聞いてみて,そこに至るまでの中間部での低音楽器の刻む重いリズムなども聞きごたえがあるな,と思いました。

アンコール2曲目は,カナディアン・ブラスの代表曲である"Lookin' Good"が演奏されました。このブラス・アンサンブルの演奏は聞いたことはないのですが,最後の部分では5人が立ち上がって,左右に楽器を揺らしながら演奏するなど,「サービス精神たっぷり」の楽しい演奏で演奏会を締めてくれました。

室内楽編成での金管アンサンブルについては,OEKの編成上の制限もあり,あまり演奏される機会がなかったのですが,今回のように「大きめの編成の定期演奏会」の翌日だと企画しやすいのではないかと思いました。次回はフィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルぐらいの編成での演奏に期待したいと思いました。

PS. この日の音楽堂は,邦楽ホールで「落語版ラ・フォル・ジュルネ」みたいなイベントをやっていました。こちらもとても楽しそうでした。北陸新幹線が開通したら,東京と大阪からの時間がほぼ同じぐらいになるので,上方VS江戸の和物企画を行うには金沢はぴったりかもしれませんね。

 

 

(2015/02/11)






演奏会のポスター


開演前の交流ホール


入口で北陸朝日放送の粗品が配布されました。


JR金沢駅です。



いよいよ,北陸新幹線の指定席券の発売が始まるようです。


駅のコンビニにも,この手のお土産が増えてきました。


以前から気になっていた北陸限定の「カントリーマアムあんころ餅味」を売っていたので家族用に購入


ちゃんとカントリーマアムとあんころ餅の味の両方がしていました。好評でした。

















東京ディスニーリゾートの宣伝です。先ほど,「Let It Go」を聞いたばかりだったので,思わず撮影。ただし,「Frozen」な世界ならば,まだ金沢の方が相応しいかも。


なぜか,臨時の「真実の口」が金沢駅に設置されていました。