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金沢交響楽団第60回定期演奏会
2015年6月27日(土)19:00〜 金沢歌劇座

ニコライ/「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
シベリウス/「カレリア」組曲,op.11
ブラームス/交響曲第4番ホ短調,op.98
(アンコール)ブラームス/ハンガリー舞曲第6番

●演奏
大久保譲指揮金沢交響楽団



Review by 管理人hs  

地元のアマチュアオーケストラ,金沢交響楽団の定期演奏会が行われたので,やや小雨気味の中,金沢歌劇座に出かけて,聞いてきました。

今回聞きに行こうと思ったのは,数日前の北國新聞の記事に,数年前の北陸新人登竜門コンサートに出演したことのある笠間芙美さんがホルンのエキストラで出演すると,書かれていたことと,ブラームスの交響曲第4番とシベリウスのカレリアを中心としたプログラムに惹かれたからです。なお,金沢交響楽団の指揮者は,長年,大能正紀さんが担当されていましたが,大久保譲さんに交替になったようです。

まず,ニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲が演奏されました。この曲は有名曲の割りに近年は実演で演奏される機会はあまり多くないと思います。じっくり,しっかりとオーケストラの音を鳴らした演奏で,やや腰が重い感じでしたが,曲をいつくしむような味わいがありました。

シベリウスの組曲「カレリア」もじっくりとしたテンポで演奏されました。第1曲「間奏曲」は,冒頭のホルンの音からひなびた感じで始まりました。途中,パリッとした感じで盛り上がり,最後は,ホルンセクションが,弱音の高音をしっかり決めてくれました。今回,ホルンにゲスト出演されていた笠間さんは,現在フィンランドのオーケストラのメンバーとして活躍されているということで,「カレリア」を得意とされている曲かもしれませんね。

第2曲「バラード」は,厚みのある弦楽合奏の響きが印象的でした。たっぷりと息を吸い込んでしっかりと歌うような,ゆったりとした感じがいいな,と思いました。最後はイングリッシュホルンが堂々と締めてくれました。

第3曲「行進曲風に」にも,どこかのどかさがありました。この曲では途中,トランペットが合いの手を入れるところが,シベリウスらしくで好きです。この日の演奏はじっくりと演奏されていたので,壮麗な感じになっていました。最後の方で,対位法的に音が絡み合う部分もくっきりと演奏されており,大変たのしめました。

後半では,ブラームスの交響曲第4番が演奏されました。同じ週の月曜日(6月22日)に井上道義指揮OEKで交響曲第2番を聞いたばかりでしたが,金沢交響楽団の第4番にも違った良さがありました。指揮の大久保譲さんのテンポ設定は,やや遅めで,どの音もしっかり鳴らそうという誠実さを感じました。演奏の精度や各パートのバランスの点では,もちろんOEKにはかないませんが,そのじっくりとしたテンポからは,しみじみとした味がじわじわと感じられて来ました。各曲のクライマックスでの思い切りの良い鳴らし方も爽快でした。

第1楽章は,引き締まった音で率直,ストレートに始まりました。曲が進むにつれてスケールが大きくなり,交響曲らしいと思いました。第2楽章は,中間部でのしみじみとした熱さが印象的でした。特にチェロの歌が良いと思いました。

第3楽章もじっくりとしたテンポで演奏されました。ちょっと大味かなという部分もありましたが,ずしりと聞かせてくれました。

変奏曲形式の第4楽章では,まず輝きのある音で演奏された主題が立派でした。各変奏もしっかりと描き分けられていました。石川県ジュニア・オーケストラの指導をされている方がフルートを担当されていましたが(お名前に見覚えがありました),いちばんの見せ場では,しみじみと聞かせる,さすがという演奏を聞かせてくれました。トロンボーン3本によるしみじみとした和音も見事でした。コーダではティンパニに強打を中心に盛り上がり,全曲をスケール感たっぷりに締めてくれました。

アンコールではブラームスのハンガリー舞曲第6番が演奏されました。この曲もゆっくり目のテンポで,慌てず楽しく,という演奏になっていました。

どの曲でも演奏が終わった後,大久保さんはいつも笑顔を見せていました。その雰囲気どおりの,音楽を演奏する喜びが作ってくるような演奏会でした。

(2015/07/05)

















i入口の看板は,大変立派でした。


ロビーには団員宛のプレゼントが沢山並んでいました。


この日は金沢21世紀美術館に車を留めました。終演後の「人のいない」美術館は独特の雰囲気でした。