オーケストラ・アンサンブル金沢ファンタスティック・クラシカルコンサート
出発進行!鉄道クラシック
2015年7月30日(木) 19:00〜 石川県立音楽堂コンサートホール |
1)ドヴォルザーク/スラヴ舞曲第1番ハ長調,op.46-1
2)ドヴォルザーク/ユモレスク
3)スーク/弦楽セレナード変ホ長調,op.6〜第1楽章
4)ドヴォルザーク/交響曲第9番ホ短調,op.95「新世界から」〜第4楽章
5)三浦秀秋編曲/鉄道の歌メドレー(鉄道唱歌,汽車ポッポ,汽車,高原列車は行く,電車ごっこ,花嫁,線路は続くよどこまでも)
6)ルスティケッリ(三浦秀秋編曲)/映画「鉄道員」のテーマ
7)国吉良一(三浦秀秋編曲)/映画「鉄道員(ぽっぽや)」のテーマ
8)福嶋頼秀編曲/「銀河鉄道999」メドレー(アニメ版と映画版のテーマ曲のメドレー)
9)(アンコール)シュトラウス,J./ポルカ「観光列車」
●演奏
秋山和慶指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサートマスター:荒井英治)
立川真司(効果音)*9
進行役:立川真司,ゲスト:中川家礼二
オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の2014/2015シーズンの最後は,鉄道マニアとして知られる指揮者,秋山和慶さんが登場し,北陸新幹線開業にちなんで,鉄道にちなんだ曲が演奏されました。進行役として,鉄道ものまねの元祖立川真司さん,スペシャルゲストとして,やはり鉄道マニアである,中川家礼二さんが登場し,通常のクラシック音楽の演奏会とはかなり違ったムードで「出発進行!」となりました。
正直なところ,「指揮生活50年(ど根性ガエルではありませんが)」の秋山和慶さんが登場するならば,本格的なクラシック音楽のプログラムが良いかな,とも思っていたのですが,鉄道好きの秋山さんが車掌さんのコスプレで指揮するというのも,これは大変貴重な機会です。前半は,通常の燕尾服で指揮をされていましたが,後半では車掌さんの姿で帽子をかぶって登場しました。
前半は鉄道マニアの作曲家として知られるドヴォルザークの作品中心に演奏されました。最初に演奏されたスラヴ舞曲第1番から,秋山さんらしく,どの曲もじっくりとしたテンポで演奏されました。
それでいて退屈なところはまったくなく,金管楽器などを鮮やかにならし,充実感のあるサウンドを楽しませてくれました。音がきっちり整理されているのですが,クライマックスになると音がパッと広がるのが見事でした。
ユモレスクもじっくりとしたテンポで演奏されました。もともと懐かしの昭和の味(?)といったムードを持っている曲ですが,最後の部分では,さらにテンポを落とし,懐かしさたっぷりになりました。
3曲目の作曲家のスークは,ドヴォルザークの弟子でドヴォルザークの娘と結婚した人です(往年の名ヴァイオリニストで同姓同名のヨセフ・スークのおじいさんですね)。ここで演奏された,弦楽セレナードも,ドヴォルザークの弦楽セレナードととても似た雰囲気の曲です。すっきりとした清潔感をベースに控えめに情感が動く大変美しい曲です。秋山さんのキャラクターにぴったりの作品でした。これは是非,秋山さんの指揮で全曲を聞いてみたいと思いました。
ちなみにこの日のコンサートマスターですが,東京フィルのコンサートマスターの荒井英治さんがゲストで参加されていました。機会があれば,また別の演奏会でも荒井さんの演奏は聞いてみたいものです。
前半最後は,おなじみの「新世界から」の第4楽章が演奏されました。オーケストラの編成的にグランクラスほどにはゴージャスではないけれども,大変バランスの良い音で,座り心地の良い北陸新幹線に乗って長野まで行った感じ(全曲演奏だったら東京までですね),という趣きでした。要所要所でのトランペットを中心とした響きもしっかりと突き抜けて聞こえてくるのに,バランスの良さを感じました。
この楽章では,1回だけ出てくるシンバルに注目してしまいます。小さくシャーンの演奏した後,魔法がかかったように曲の気分がしっとりとした感じに変わるのが好きです。渡邉さんの音は絶妙の”シャーン”でした。その後に続く,木藤さんのクラリネットの音にも聞き惚れました。
秋山さん指揮による演奏は,定刻通発車し,定刻通りに到着,新幹線同様50年間無事故無違反,といった安心感抜群の演奏でした。東海道新幹線が開通した1964年に秋山さんは東京交響楽団の指揮者になっていますが,これも何かの因縁かもしれません。
後半は鉄道にちなんだ曲のメドレーを中心に,色々な曲が演奏されました。最初に演奏された「鉄道の歌メドレー」は快適なテンポ感ですっきりと気持ちよく流れる,新幹線のような流線形の演奏を聞かせてくれました。
まず,最初にチェレスタのソロで「鉄道唱歌」が演奏されましたが,これは昔から車内放送の曲としてお馴染みです。松井晃子さんの演奏だと,とても洒落た感じに響いていました。この曲に続いて色々な曲が出てくるのですが,個人的には,ナツメロ「高原列車は行く」が,実に良いテンポ感だなぁと思いました。もともと鉄道が走っているようなリズムを持った曲なので,オーケストラ演奏だとさらに楽しさが増していました。
その後,ゲストの中川家礼二さんが登場し,進行役を務めていた立川真司さんとの掛け合いによる,鉄道ものまねコーナーとなりました。立川さんの話によると,この2人が1対1で顔を合わせるのは初めて,大変貴重な機会とのことでした。
「鉄道ものまね」といっても,いろいろなジャンルがあり,「ホームでのアナウンス」「車内での英語のアナウンス」「列車のトイレの音」「列車の走行中の音」...と予想以上にマニアックな世界でした(タモリさんあたりも好きそうな世界だと思いました。)。
特におかしかったのは,ホームで自動放送が流れているのに,駅員さんが割り込むように同じアナウンスを上から叫ぶ,という「あるある」という状況でした。立川さんによると,駅員さんからすると「我慢できずに,言わずにはおれなくなる」というのが,その理由とのことです。その他にも,新幹線内の英語による停車駅の説明のアナウンスのイントネーションがJR西日本と東日本では全然違う...とか相当面白いネタの連続でした。
その後,立川さんが,日本映画「鉄道員」のラストシーン(小林稔二さんが出てくるシーン)の「音による再現」を行った後,「鉄道員」の音楽(イタリア映画の「鉄道員」のテーマと日本映画の「鉄道員」)の聞き比べがありました。イタリア映画の方は名曲として知られた曲ですが,改めてオーケストラの演奏で聞くと,何と上品で美しいのだろうと感じました。日本映画の「ぽっぽや」の方は,シロフォンが使われていたり,どこか懐かしい味がありました。気のせいか,両曲の気分はとても似ているなぁと感じました。
続いて,立川さんが,映画「銀河鉄道999」のラストシーンを声帯模写で再現しました。この映画を観たことがないので,似ているのか似ていないのかよく分からなかったのですが,その多彩な声を聞くだけで,すごいなと感じました。
その後,テレビ版「銀河鉄道999」と映画版「銀河鉄道999」のテーマ曲がメドレーで演奏されました。テレビ版の方はマイナー(短調)で映画版(おなじみのゴダイゴの曲)はカラッとしたメジャー(長調)なので,続けて演奏すると,暗から明への推移が鮮明に表れます。特に映画版「999」は,吹奏楽アレンジ版などでもよく演奏されており,すっかり鉄道にちなんだ曲の定番になっていますね。演奏会全体の最後のこの曲だったので,聞く前は「ちょっと物足りないかな?」とも思ったのですが,そんなことはなく,カラッと晴れた見事なサウンドで気持ち良く締めてくれました。
最後,アンコールでシュトラウスのポルカ「観光列車」が演奏されました。この曲は,OEKが頻繁に演奏している曲ですが,特に軽快な演奏だったと思います。途中から,立川さんの物まねによる効果音が入りましたが...この曲については,じっくり聞きたかったな,という気がしました。
この日は「夏休みに入ったばかり」ということで,親子連れ(鉄道がテーマのせいか父+息子のような組み合わせが結構多かった気がしました)の姿が目立ちました。これまでのOEKの演奏会にはなかったような演奏会でしたが,リラックスして楽しむことができました。
もしもこのテーマで私が選曲するならば...映画「オリエント急行殺人事件」のテーマ(リチャード・ロドニー・ベネット作曲の3拍子の曲)や「世界の車窓から」のテーマ(カンタさんのソロがいかにも似合いそう)なども入れてみたかったのですが...これは第2弾に期待したいと思います。
PS. この日は,開演前の会場放送が立川さんが担当していました。男性の声による館内放送というのは,非常に新鮮でした。
PS. ドヴォルザークの「鉄道エピソード」としては次のようなことが紹介されていました。
- ドヴォルザークは毎日40ページ作曲することに決めており,そこまで達したら作曲を止め,鉄道を見に行っていた。
- ドヴォルザークが娘婿のスークに「新しく走ることになった列車の列車番号を調べてきてくれ」と頼んだのですが...スークの方は関心が無く,適当な番号を答えたら,激怒された
個人的には,秋山さん自身の,「鉄道マニアぶり」についての話を伺ってみたい気がしました。

ステージ上手には,立川さんが作った「金沢」というパネルがあったのですが...ちゃんと写っていませんでした。次のような感じのもの(私が個人的に持っていたキーホールだーです)。

(2015/08/01)
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公演の立看板

公演のポスター

音楽堂から見た,北陸新幹線ホーム。新幹線が見える,コンサートホールというのは,石川県立音楽堂ぐらい?

もう少し暗くなった状態。この日は,列車は見えなかったようです。
この日は,秋山さんと立川さんと北陸放送の谷川アナウンサーのサイン会がありました(谷川さんは特にステージには出ていなかったようですが...企画に参加?)

秋山さんには,新刊の「ところで,きょう指揮したのは?」の本にいただきました。この正統的な肖像写真っぽい感じも実に秋山さんらしいですね。表紙は次のような感じです。大変面白い本でした。

立川さんは,何とボールペンと定規を使ってサインをされました。もともとは技術的な仕事をされていたとのことです。

北陸放送の谷川さんからは,番組の宣伝の写真もいただきました。

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