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兼六園周辺文化の森サマーミュージアムウィーク:夕暮れコンサート:ヴァイオリンとピアノの調べ
2015年8月8日(土) 18:00〜 石川県立歴史博物館 中庭

ハーライン/星にねがいを
シセル/ドラマ「Summer Snow」主題歌
アルベニス(クライスラー編曲)/タンゴ
ピアソラ/ヴィオレンタンゴ
ピアソラ/リベルタンゴ
葉加瀬太郎/ドキュメンタリー番組「情熱大陸」テーマ曲
(アンコール)ピアソラ/アディオス・ノニーノ

●演奏
坪倉かなう(ヴァイオリン),吉藤佐恵(ピアノ)



Review by 管理人hs  

兼六園周辺文化の森サマーミュージアムウィークとして,7月31日〜8月9日にかけて,兼六園周辺の美術館や博物館などでいろいろなイベントが行われました。この日は石川県立歴史博物館の赤レンガの壁面にデジタル画像を投影する「D-Kデジタル掛け軸」を夕方から見てきました。

次のような感じで,見慣れた風景がアーティスティックに変貌していました。


このイベントの前に「赤レンガ」の前で,坪倉かなうさんのヴァイオリンと吉藤佐恵さんのピアノによるミニ演奏会が行われたので,こちらも聞いてきました。野外での演奏ということで,マイクで音声を拡大し,ピアノの方は電子ピアノだったので,最初はちょっと違和感を感じましたが,段々と夕方の空気にしっかりとなじんで来ました。

日中は大変暑かったのですが,夕方からは涼しい風が吹き始め,野外で夕涼みをするのに丁度良い状況になりました。ドビュッシーの前奏曲集第1集の中に「夕べの大気に漂う音と香り」というタイトルの曲がありますが,ちょうどそんな感じでした。

 

この日は「家族で楽しめる曲を」という注文に応え選曲されたとのことですが,ラテン系の曲を中心に雰囲気がよくまとまっており,「大人が聞いても楽しめる」選曲になっていました。

最初に演奏されたのは,お馴染みの「星にねがいを」でした。マイクを通すと,細かいニュアンスの変化が拡大され,息の長い歌がさらにたっぷりと流れ,聞きごたえ十分でした。

続く「Summer Snow」は,どういう曲か知らなかったので調べてみると2000年頃の日本のテレビドラマの主題歌とのことでした。どこか切なさと,スコットランド辺りの民謡を思わせる「空気感」があるなと思い,歌手(作曲も?)のシセルという人について調べてみると,ノルウェイの歌手とのことでした。やはり,北欧の音楽には独特の雰囲気がありますね。坪倉さんのヴァイオリンの息の長いカンタービレとともに,とても良い曲だなぁと思いました。

次のアルベニスのタンゴは,ピアノ独奏曲としてよく知られている曲です。坪倉さんによると,「ヨーロッパの野外で行われるピクニック・コンサートなどでよく演奏される曲」とのことでした。ピアノ版だとどこか涼しげな風情がある曲ですが,ヴァイオリン版で聞くと少し湿度が加わる感じで,「日本の夏」の雰囲気によく合うと思いました。外気の中で聞くとまた格別という曲でした。

その後,ヴィオレンタンゴとリベルタンゴとという,ピアソラのタンゴが2曲続きました。両曲とも似た感じの躍動感がありましたので,「タンゴ2兄弟」といったところでしょうか。リベルタンゴの方は,吉藤さんのピアノによる序奏部分から技巧的で,一定のリズムが作り出す迫力がしっかり伝わってきました。その上で熱く歌われる坪倉さんののびやかなカンタービレも聞きものでした。

本編最後は,ピアソラの曲との親和性もある,葉加瀬太郎の「情熱大陸」でした。こういった熱い曲を夏の晴れた夕暮れに野外で楽しむというのは最高ですね(アルコールもあるともっと良かったかも)。リゾート気分をしっかり味わうことができました。

アンコールでは,ピアソラつながりで,その代表作「アディオス・ノニーノ」が演奏されました。途中で出てくる甘いメロディは,しっとりと熱く,名残惜しさを感じさせてくれました。

この日の坪倉さんの演奏は大変堂々としていたのですが,トークの方も楽しいもので,全く退屈せずにあっという間に30分が過ぎました。曲の合間に水分補給をしている間,「背中を見ていてください」という辺りの気さくなトークも雰囲気にぴったりでした。

今回の演奏を聞きながら,楽器一つで,どこででも自分の世界をパッと作り出すことのできるアーティストというのはすごいものだ,と改めて思いました。各曲ごとに違った世界が広がり,夕暮れの風景を少しロマンティックなものに変えてくれました。

野外での演奏というのは,クラシック音楽の奏者からすると色々と大変な点も多いと思いますが,「「赤レンガ」の前でのクラシック音楽の演奏というのは,是非,今後も続けて欲しいと思いました。

その後,日が暮れるのを待ち,「デジタル掛け軸」の方も見てきました。こちらの方は,「音なし」だったのですが,この際,坪倉さんのヴァイオリン演奏にあわせてイベントを行っても面白かった気がしました。以下,写真で紹介しましょう。

 

 

 

 

 

段々と人が集まって来て,気づいてみると「夜のピクニック」という感じになっていました。

(2015/08/14)





イベントの立看板


チラシとプログラム


石川県立歴史博物館で開催中の展覧会はなぜか「大鉄道展」



こんな感じで演奏を聞いていました


演奏会後。少し空の色が濃くなりました。


終演後,博物館内を一回り。無料公開していました。これは中から外を見た様子です。