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OEKおしゃべりクラシック Vol.1:夏休みスペシャル!
竹田理琴乃ショパン名曲特集
2015年8月15日(土) 11:00〜 石川県立音楽堂交流ホール

ショパン/ノクターン第8番変ニ長調,op.27-2
ショパン/練習曲嬰ハ短調,op.10-4
ショパン/練習曲ホ短調,op.25-5
ショパン/練習曲嬰ハ短調,op.25-7
ショパン/ワルツ第1番変ホ長調,op.18
ショパン/バラード第1番ト短調,op.23
ショパン/アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ変ホ長調,op.22
(アンコール)ショパン/マズルカ第37番変イ長調,op.59-2

●演奏
竹田理琴乃(ピアノ)



Review by 管理人hs  

夏休み真っ最中,石川県立音楽堂交流ホールで「OEKおしゃべりクラシック:夏休みスペシャル」が行われたので聞いてきました。この公演は午前と午後に分かれており,午前は竹田理琴乃さんのピアノ,午後は,鈴木織衛さん指揮によるオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)メンバー,石川県ジュニア・オーケストラ,OEKエンジェルコーラスによるステージでした。

そのうち午前の部の竹田理琴乃さんのピアノを聞いてきました。竹田さんは,北陸新人登竜門コンサート→いしかわミュージックアカデミー音楽賞→日本音楽コンクール第3位という形で順調に活動の場を広げている,金沢市出身の若手ピアニストです。竹田さんは,今年の秋に行われるショパン国際ピアノ・コンクールに出場するそうです。その「最終調整」のため,今回もいしかわミュージック・アカデミーに参加されるのだと思います。

この演奏会は,朝日新聞主催でした。以前は「朝日親子サマースペシャル」というOEKを中心とした演奏会が行われていましたが,数年前からはOEKメンバーが進行役として加わる「おしゃべりクラシック」という形で年数回,室内楽を中心とした公演を行う形に変更になったようです。今回は,OEKのメンバーが演奏では加わることはありませんでしたが,トランペットの藤井さんが司会役で登場し,竹田さんのプロフィールを紹介した後,演奏が始まりました。

今回のプログラムは,ショパンのノクターン,練習曲,ワルツ,バラード,ポロネーズから抜き出した7曲でした。華麗なる大円舞曲などよく知られた曲も入っていましたが,いわゆる「ショパン・ピアノ名曲集」といったベスト盤CDに入っているような曲ばかりという構成ではなく,曲の深みであるとか鮮やかな技巧をしっかりと聞かせる曲が中心になっていました。この辺は,やはりショパン国際ピアノ・コンクール出場を意識しての構成なのだと思います。竹田さんは,既に2013年の日本音楽コンクール第3位入賞の実力者ですが,演奏にはさらに演奏に磨きがかかっていると思いました。

最初のノクターンop.27-2は,ベースは平静だけれども後半に掛けてドラマを感じさせるような演奏で,さらに竹田さんの表現力が豊かになったと感じました。竹田さんといえば,ピンクの可愛らしいドレスを着ていた印象があるのですが,この日は紺色のドレスでした。ポーランドで勉強を初めて丁度3年が経ったと語っていましたが,演奏全体の雰囲気も大人っぽくなったと感じました。

続いて,練習曲集から3曲が演奏されました。最初のop.10-4は,練習曲の全曲CDで言うと,「別れの曲」の後,いきなり急速で演奏される曲です。実は実演ではあまり聞いたことのない曲だったのですが,大変鮮やかな演奏で,目が覚めるようでした。音の動きの軽やかさは,竹田さんの演奏の特筆すべき素晴らしさではないかと思います。

op,25-5.op.25-7の2曲は,ゆっくり目の曲で,しっかりとした歌を聞かせてくれました。特にop.25-5の中間部での歌が素晴らしいと思いました。op.25-7は「謎めいた問いかけ」といった趣きのある曲で,重苦しい気分がありましたが,その中に透明感があるのが良いと思いました。

華麗なる大円舞曲は,ワルツ集の中でも最も人気のある有名曲の一つです。何というか,「今の理琴乃さんにぴったり」といった感じの素晴らしい演奏でした。速いテンポの軽快な雰囲気で始まり,全曲を通じて音がキラキラと輝いていました。本当によく指が回るなぁと思います。その中で,随所で自然な流れに乗ったニュアンスの変化が付けられていました。

バラード第1番は,最近ではフィギュアスケート用の曲としても使われていましたね。曲が始まって,しばらくして出てくる甘いメロディが印象的な曲ですが,このメロディが2回目に出てくる時に,パッと大きく広がるようになるのがいいなぁと思いました。軽快なきらびやかさと同時に緊迫感も十分に感じさせてくれました。

最後に演奏された,アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズは,プログラムの最後を締める,特に素晴らしい演奏だったと思いました。清冽な音楽が流れる前半,軽やかに音が飛び跳ねる後半。若々しさと同時にビシッと引き締まったフォームを感じさせてくれる,見事な演奏でした。

プログラム全体としては45分ぐらいで,竹田さんは,これらの曲を袖に引っこむことなく集中して聞かせてくれました(拍手は入りましたが,曲間にトークは入りませんでした。)。

最後に,藤井さんからのインタビューがあった後,アンコールでマズルカop.59-2がしっとりと演奏されました。その脱力した感じが,アンコールにぴったりでした。

竹田さんは9月10日に,ショパン国際ピアノ・コンクール用の曲を集めたプログラムで,金沢でもう一度リサイタルを行いますが,コンクールでの活躍を大いに期待したいと思います。

PS. この日は,夏休みということで,親子連れのお客さんが沢山入っていました。実は私も親子連れだったのですが...私の方が子供でした。「夏休みスペシャル」ということで,交流ホールでも良かったかも,という気がしました。

PS. 今回のショパン国際ピアノコンクールのサイトですが,次のとおり大変充実しています。
出場者一覧
http://chopincompetition2015.com/competitors

竹田さんのページ
http://chopincompetition2015.com/competitor/f7ff3c97-fc7b-4da5-b2b6-6e2e65b7c099
演奏の動画などにもリンクされているので,一度じっくり見てみたいと思います。

(2015/08/20)



終演後,そのまま地下道を通って,JR金沢駅へ


駅の構内には,氷柱が出ていました。右側は百番街のキャラクターの「ひゃくばんさん」ですね。

 






公演の案内(吉弥さんの落語をやっていたとは知りませんでした)。

公演のポスター


終演後のステージ




朝日新聞主催というとで,この季節おなじみの石川県吹奏楽コンクールと石川県合唱コンクールの写真も飾られていました。