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Electric Light Symphony by OEK × Rhizomatiks
2015年10月16日(金) 19:30〜 金沢駅 もてなしドーム

ベートーヴェン/交響曲第7番イ長調, op.92〜第1楽章
ヘンデル/水上の音楽〜アレグロ,エアー,ア・ラ・ホーンパイプ
グリーグ/ホルベルク組曲〜前奏曲
シュトラウス,J.II/ポルカ「観光列車」
スーク/弦楽セレナード〜第1楽章
渡辺俊幸/NHK大河ドラマ「利家とまつ」〜メインテーマ「颯流」
ベートーヴェン/交響曲第7番イ長調,op.92〜第4楽章

●演奏
斎藤一郎指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサートマスター:松井直)



Review by 管理人hs  

このところ金沢では,気持ちの良い快晴が続いています。一週間の仕事の終わった金曜日の夕方,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)が,JR金沢駅のもてなしドームで演奏するElectric Light Symphonyというイベントが行われました。この場所でOEKがフル編成で登場するというのは初めてのことです。


遠目に見た金沢駅鼓門。 ひゃくまんさんバルーンが狛犬のように浮かんでいるのが実にシュール

このイベントですが,タイトルどおり,OEKの演奏する音楽に合わせてシャンデリア状のスクリーンに映像が投影され,ドーム内の照明が多彩に変化するというものです。昨年は,東京駅近くのKITTEというビルで行われたのですが,今回は北陸新幹線開通記念ということで,金沢駅で行われました。

私同様,OEKがこの場所で演奏するのを見に来た人もいれば,通りがかりの観光客もいる,ということで,開演時間の19:30前から大勢のお客さんが集まっていました。赤じゅうたんの敷かれた特設ステージの上でOEKが演奏する姿を見るのは,ファンとしても,ちょっと誇らしい気分でした。


開演前のリハーサルの様子です。全曲は演奏していませんでしたが,映像も併せてリハーサルしていました。

イベントは指揮の斎藤一郎さんのトークを交えて行われました。斎藤さんは,棒を振る動作が非常に大きく,広々としたドームの雰囲気にぴったりでした。1曲目,ベートーヴェンの交響曲第7番の第1楽章の最初の一音での,手を高く上に伸ばした状態から,真下に棒を振り下ろす動作は,大変ダイナミックでした。

音響の方は流石に,コンサートホール内で聞くようなわけにはいかず,マイクで拡声していたこともあり,やや不自然な響きでした。残響はとても長いのですが,各楽器の音が溶け合って聞こえず,弦楽器などはかなりギシギシとした感じに聞こえました。これは特定の楽器をマイクでクローズアップしていたためかもしれません。今回は,結構前の方で聞いていたのですが,もしかしたらもっと離れた場所で聞けば,もっと心地よく響いていたのかもしれません。

演奏された曲の中では,シュトラウスのポルカ「観光列車」が特に楽しめました。曲が進むにつれて,ひゃくまんさんの映像が大量発生し,密集してうねるような,すごい映像でした。今回は,映像に合わせて演奏するのではなく,音楽を電気信号化した映像を流すということで,音と映像がしっかりマッチしており,非常に見ごたえがありました。近くに居た女子高生も「受ける〜」という感じで楽しんでいました。斎藤さんは途中,警笛を鳴らしていましたが...これは,やや音は聞こえにくかったですね。

 
曲の最後の部分で,巨大ひゃくまんさん登場。背景に写っているのは小型ひゃくまんさんの群れです。

お馴染み,NHK大河ドラマ「利家とまつ」のテーマも雰囲気にぴったりでした。音楽もゴージャスなら,映像もゴージャスでした。最後の部分でスクリーンが白く明るくなるのも,新鮮でした。

その他,グリーグのホルベルク組曲,ヘンデルの水上の音楽,スークの弦楽セレナードの各曲の一部が演奏されました。管楽器奏者の休憩時間の意味もあったかもしれませんが,広い空間に響くストリングスもなかなかゴージャスでした。水上の音楽のア・ラ・ホーンパイプでは,トランペットやホルンが爽快な音を響かせてくれました。

斎藤さんのトークでは,故岩城宏之さんとの思い出,高校生の頃,指揮の勉強のため出身地の福井県大野市から米原経由で新幹線を使って東京まで通っていた思い出(その後,バレーボールもしていたそうです。体育会系ですね。)が語られました。


斎藤さんのトークの時にはカメラ映像が投影されていました。こうやってみると,どこか映画「ブレードランナー」風?

最後は,最初に演奏されたベートーヴェンの交響曲第7番の第4楽章が堂々と演奏され,お開きとなりました。

最初から最後まで立ったままだったので,結構疲れたのですが(実は,開演前の公開リハーサルから立ったまま聞いていたので),「滅多に味わえない祝祭的な気分」を体全体で感じることができました。雰囲気としては,ラ・フォル・ジュルネ金沢恒例のクロージング・コンサートとちょっと似た感じがあtったかもしれません。

というわけで,このイベントについては,年に数回行って欲しいものです。OEK以外でも,吹奏楽団でも面白いかもしれませんね。というわけで,今後「金沢の目玉商品」の一つになっていきそうな,企画だと思いました。

(2015/10/10)




イベントの案内パネル



通常は休憩用のベンチになっている辺りの池にOEKが写っていました。


2個のバルーンですが,激しく回転していたので,同時に2個の「顔」撮影するのは至難でした。

終演後,フォーラスに寄って,戻ってみると...ちょっと見てはいけないものを見てしまいました。


バルーンが地に落ちていました。

さらに...

空気を抜いて,ふにゃふにゃに。

祭りの後のような,ちょっと哀しい光景でした。