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ラ・フォル・ジュルネ金沢2015 パシオン・バロック:バッハ,ヘンデル,ヴィヴァルディ
2015年4月29日〜5月5日 石川県立音楽堂,金沢市アートホール,JR金沢駅周辺,金沢市内各地

Review by 管理人hs  

4月29日(水・祝) 開幕ファンファーレ,ミニコンサート,オープニング・コンサート


ラ・フォル・ジュルネ金沢2015。今年のテーマは「パシオン・バロック:バッハ,ヘンデル,ヴィヴァルディ Passions baroques:Bach, Handel, Vivaldi」です。満を持してのバロック音楽ですが,もう一つ重要なのが「北陸新幹線金沢開通記念」です。というわけで,黄色いポスターのデザインどおり,「バッハ,ヘンデル,ヴィヴァルディ,新幹線」が主役です。



ラ・フォル・ジュルネ金沢のオープニングの日に大雨が降ったことはないのですが(小雨はあったかも),8回目の今回も快晴でした。例年,オープニング・ファンファーレはJR金沢駅コンコースで行っていたのですが,北陸新幹線開通後,観光客が急増していますので,さすがにコンコースを使うのは厳しいと思います。今年は半分野外の鼓門下でオープニング・セレモニーが行われました。

 

■音楽祭開幕ファンファーレ
11:00〜 JR金沢駅 もてなしドーム 鼓門下

登場したのは金沢大学フィルとJR金沢駅の皆さんによる合唱団でした。



木製の楽器の多いオーケストラにとって,野外での演奏は,かなり条件は悪かったと思うのですが,快晴の空を背景に気持ちよい演奏を聞かせてくれました。JRや金沢百番街の制服を着た人たちが歌っている姿を見るのもとても新鮮で良かったですね。

演奏された曲は...バロック音楽と関係のない曲もありましたが,JR金沢駅に到着した観光客を,オーケストラと合唱の響きでもてなしていました。

■【OP】 オープニングコンサート
14:00〜 石川県立音楽堂コンサートホール

1) シャルパンティエ/テ・デウム H.146〜前奏曲
2) バッハ,J.S.(外山雄三編曲)/トッカータとフーガ ニ短調, BWV.565
3) バッハ,J.S./ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調, BWV.1042
4) バッハ,J.S./無伴奏チェロ組曲第1番ト長調, BWV.1007〜プレリュード
5) ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲集「四季」 op.8〜「春」第1楽章
6) ヘンデル/「水上の音楽」〜第1,6,7,8,12曲
7)(アンコール)澤野弘之/NHK連続テレビ小説「まれ」テーマ曲「希空(まれぞら)」
●演奏
井上道義*2-3,6;青島広志*7指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサートマスター:アビゲイル・ヤング)*1-3,5-7
オリヴィエ・シャルリエ*3, アビゲイル・ヤング*5(ヴァイオリン),ルドヴィート・カンタ(チェロ*4),渡邊荀之助(能*4),石川県内児童合唱団メンバーによる合同合唱団*7
司会:青島広志


午後からは石川県立音楽堂コンサートホールでオープニング・コンサートが行われました。

シャルパンティエのファンファーレ(ヨーロッパで行われているコンサート中継の時によく使われている曲)に続き,例年通り,前田家当主の利祐氏,谷本石川県知事,山野金沢市長のあいさつがあった後,青島広志さんの司会で演奏会が始まりました。

最初に演奏されたのは,バッハのトッカータとフーガを外山雄三さんがオーケストラとオルガン用に編曲したものでした。石川県立音楽堂が開館した時に演奏された曲ですが,原曲らしさをしっかり残しつつ,オ―ケストラがオルガンと競うように色彩感を発揮する曲で,OEKと音楽堂にぴったりの作品です。

オーケストラが演奏する最初の音が「チューニング」とほぼ同じというのも,音楽の原点を思わせる感じで,面白いと思いました。オルガンはおなじみの黒瀬恵さんで,OEKと一体となった演奏を聞かせてくれました。

続いてバッハのヴァイオリン協奏曲第2番がオリヴィエ・シャルリエさんのヴァイオリン独奏を加えて演奏されました。バッハというと堅苦しいイメージがありますが,がっちりとしたフォーマットを感じさせながらも,その中で自由自在に演奏するような素晴らしい演奏でした。井上道義指揮OEKの演奏との息もぴったりでした。シャルリエさんのヴァイオリンの音は,「春」の雰囲気にぴったりの柔らかさと暖かさがありました。本公演での演奏も大変楽しみです。

その後,このプログラムが入っているとは知らなかったのですが,渡邊荀之助さんの能舞とOEK首席チェロ奏者,ルドヴィート・カンタさんの共演でバッハの無伴奏チェロ組曲第1番のプレリュードが演奏されました。

カンタさんがじっくりと,味わい深く演奏する中,どこか若々しさを感じさせる能舞(赤い髪のカツラ)が絡み合い,静かでどこかドラマティックなコントラストを持ったステージを楽しませてくれました。

続いて,今度はヴィヴァルディに移り,アビゲイル・ヤングさんのヴァイオリン独奏で(井上道義さんは登場しませんでした),「四季」の中の「春」の第1楽章が演奏されました。お馴染みのメンバーによる,阿吽の呼吸で演奏された演奏で,「言うことなし!」の春でした。本公演での全曲も大変楽しみです。

最後にヘンデルの「水上の音楽」の抜粋が演奏されました。井上さんはヘンデルが大好き(だと思います)が,この日の青空にぴったりの爽快感と優雅さを持った演奏を聞かせてくれました。抜粋版だったので,丁度,バッハの管弦楽組曲を聞くような感じになっていました。途中,バロックダンスも加わるなど,大変変化に富んだステージでした。

というようなわけで,実に多彩なオープニング・コンサートとなりました。金沢のラ・フォル・ジュルネのエッセンスを抜き出したような充実感があり,本公演への期待を高めてくれました。

最後にアンコールが演奏されました。バロック音楽かな?と思っていたら...何と,NHK連続テレビ小説「まれ」のテーマ曲でした。地元の児童合唱も加わる華やかなステージになりましたが,さすがにバロック音楽の後だとちょっとイメージが離れすぎだったかもしれません(この曲だけは,井上さんではなく青島広志さんの指揮でした)。



この辺も含め,「何でもあり」「何が出てくるのか分からない」のがラ・フォル・ジュルネ金沢ですね。これから1週間,存分に楽しみたいと思います。



PS. オープニング・コンサートは北陸朝日放送が生中継を行っていましたが...最後の「まれ」はそのまま放送されたのでしょうか?録画していたので,後で確認したいと思います。

お馴染みの青島広志さんのイラスト入りの「柱」です。バッハとヘンデルなのですが...さて,どちらがどっちでしょうか?