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金沢市民芸術村20周年;洋の音楽「管・弦・打楽器大集合!」
2016年10月9日(火) 金沢市民芸術村パフォーミングスクエア

1. かほく市吹奏楽団
ヤングマン(YMCA)
上を向いて歩こう
笑点のテーマ

2. Fun Bright Big Band
Fun TIme
Legacy
In A Brazilian Bone Tone

3. アンサンブル★ふぁみりあ
ゲラゲラポー走曲
幸せなら手をたたこう
となりのトトロ:コンサートバンドのためのセレクション
夢をかなえてドラえもん

4. 金沢クラリネット・アンサンブル
ラヴェル/組曲「クープランの墓」〜前奏曲,リゴードン
八木澤教司/カプリッチョ(クラリネット八重奏)
クラリネットをこわしちゃった

5. 百萬石ウィンドオーケストラ
矢藤学/マーチ・スカイブルー・ドリーム(2016年全日本吹奏楽コンクール課題曲T)
グランサム/ジェ・エテ・オ・バル

6. 金沢室内管弦楽団
ブラームス/ハンガリー舞曲第6番
ハイドン/交響曲第101番「時計」〜第2楽章
アンダーソン/リンコペイテッド・クロック

7. 石川フィルハーモニックウィンズ
365日の紙飛行機
世界に一つだけの花
となりのトトロ〜さんぽ,となりのトトロ

8. 金沢サクソフォンアンサンブル
モンスターハンター「英雄の証」
プリンセスセレクション
Over The Rainbow

9. 金沢吹奏楽研究会
ゲームミュージックセレクション
アイアンマン3〜Can You Dig It?
It'll Be Magical!

10.合同演奏
スーザ/星条旗よ永遠なれ(金沢市民芸術村20周年スペシャルバージョン)
(アンコール)スーザ/星条旗よ永遠なれ(金沢市民芸術村20周年スペシャルバージョン)(後半のみ)



Review by 管理人hs  

金沢市民芸術村が開村して今年で20年になります。地元のアマチュア音楽団体や劇団などのアーティストの練習場や発表の場としてすっかり定着しています。この20年の間,金沢市には石川県立音楽堂がオープンし,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)が活躍の場を広げ,21世紀美術館がオープンし,ラ・フォル・ジュルネ金沢が始まり...と文化・芸術に関する活動が大変活発になりましたが,恐らく,地元のアマチュア・アーティストにとっては,この金沢市民芸術村のオープンがいちばん重要な出来事だったのではないでしょうか。


安価な使用料で24時間使えるという使いやすさだけではなく,赤レンガの外装と歴史を感じさせる太い梁の内装,施設の外には芝生が気持ちよく広がる...という建物自体の面白さも特筆すべきものだと思います。使った人なら誰もが愛着の湧く施設になったと思います。

その20周年を祝うイベントとして,芸術村を日常的に練習場としているクラシック音楽・ジャズ関連の9団体が次々出演する演奏会が行われたので,私自身も芸術村を祝福するような気分で聞いてきました。

それぞれ15分程度ずつ演奏するということで,13:00から16:30までの3時間30分という長い演奏会になりましたが,これだけを一気に聞ける機会はないので,じっくりと聞いてきました。もちろんいちばんの楽しみは,最後に合同演奏した「星条旗よ永遠なれ」でした。その期待どおりのスペシャルな演奏となりました。
 開演前の様子

今回登場した9団体それぞれに特徴があったのが面白いと思いました。

1. かほく市吹奏楽団
いきなりYMCA...お客さんは,みなさんしっかりと,例の西条秀樹版の「振付」をやってくれていました。「笑点」のテーマでは,パーカッションの方が各種鳴り物を持ち替えて大活躍でした。

2. Fun Bright Big Band
今回唯一のビッグバンドジャズ。ノリのよいラテン系の音楽が気持ちよく響いていました。サックスをはじめとしたソロも大活躍。

3. アンサンブル★ふぁみりあ
若いお母さん方の潜在能力のすばらしさと度胸のよい力強さを実感。「ゲラゲラポー」では,歌のお姉さんのような見事な歌を聞かせてくれました。着ぐるみが登場したり,子どもたちのダンスがついていたり,総合エンターテインメントとなっていました。「しあわせなら手をたたこう」は,子どもを背中に背負った,歌の「お母さん」の歌に合わせて,全員参加で進んでいったのですが...最後は混乱?これがまた楽しかったですねぇ。この曲はビッグバンド風にもぴったりだということも発見。

4. 金沢クラリネット・アンサンブル
5種類のクラリネットにおるアンサンブルでした。「クープランの墓」はオリジナルのオーボエ版よりも落ち着いた感じ。本家本元の「クラリネットをこわしちゃった」も楽しい演奏。演奏の途中,楽器持ち替えに手間取り,どうなるかと思ったのですが,素晴らしいリカバリーでした。

5. 百萬石ウィンドオーケストラ
今月末,金沢で行われる全日本吹奏楽コンクールに出場。コンクールに向けての最後の調整といったところでしょうか。柔らかみと重みのある,さすがの演奏でした。自由曲の方は,バーンスタインの曲を思わせる,ジャズ風味のある曲。コンクール用としては,かなり冒険的な曲ですが,「金沢での金」を期待しています。

6. 金沢室内管弦楽団
今回唯一のオーケストラ。ハイドンの「時計」とシンコペーテッド・クロックが続くのが洒落ていました。設立30周年ということで,OEKよりは少し年上の団体ですね。

7. 石川フィルハーモニックウィンズ
個人的に,吹奏楽版で一度聞いてみたかったAKB48の「365日の紙飛行機」が演奏されました。対旋律の動きなどを気持ち良く楽しめました。「世界にひとつだけの花」は,SMAPが解散しても,そのまま定番として残っていきそうです。

8. 金沢サクソフォンアンサンブル
5種類のサックスによるアンサンブル。とにかく美しい透明感のあるハーモニーに感動しました。クラシカルなサックスの魅力がしっかり伝わってきました。「プリンセス・セレクション」は,ディズニーの王女の出てくる曲をアレンジしたもの。ちなみに芸術村の利用申請1号がこの団体とのことです。この公演に出演するのに最適の団体と言えます。

9. 金沢吹奏楽研究会
トリを務めただけあって,個人的にはこの日のMVP(Most Valuable Performance)だと思いました。カッコよい曲をあの手この手のパフォーマンスで楽しませてくれました。演奏も若々しくパワフル。アンサンブル★ふぁみりあ同様,ここでも若いお母さんが子供を背負いながら演奏しており,感動しました。各種パーカッションを演奏していたのですが,子どもが大人しいのに感心(慣れている?)。「アイアンマン3」の途中に出て来たクールな5人組のタンバリンは...夢に出てきそう?楽器を持ち上げ,立ち上がって...のパフォーマンスは,高校の吹奏楽部を思わせる楽しさでした。

10. 合同演奏
最後にこれら9団体の有志が勢揃いし,スーザの行進曲「星条旗よ永遠なれ」を120人ぐらいの編成で演奏しました。これは...ちょっと表現しようのない忘れられない演奏となりました。まさに20周年を祝うスペシャルパフォーマンスとなりました。

合同演奏の光景。トロンボーンなどは,ほとんど下向きに吹いていた感じでした。

吹奏楽団だけではなく,弦楽器メンバー,ジャズ・バンドも一緒ということで,アレンジが非常に工夫されており,各団体のソリストたちの見せ場が順番に出てくるようになっていました。最後,大きく盛り上がって一旦終わった後...ちょっとキーが変わり,今度はリズムがジャズ調に。「2回目はジャズ風に盛り上がってみましょう」という感じで繰り返されました。さらに鳴り止まない拍手に応え,もう1回アンコールで演奏されました。

 終演後のリラックスした雰囲気

まさに20年に1回の大変楽しいスペシャルなパフォーマンスでした。演奏者の皆さんに感謝すると同時に,金沢市民芸術村を運営されている方々に感謝したいと思います。

(2016/10/19)


この日の芸術村の写真です。















照明が木に付けられていました。