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ラ・フォル・ジュルネ金沢2016 ナチュール:自然と音楽
2016年4月29日〜5月5日 石川県立音楽堂,金沢市アートホール,JR金沢駅周辺,金沢市内各地

Review by 管理人hs  

2016年5月5日(木) 本公演3日目

ラ・フォル・ジュルネ金沢2016の最終日も,金沢市は快晴に恵まれました。風は相変わらず強かったのですが,過ごしやすい気候で,気持ちの良い休日気分の中,この日も沢山の音楽を楽しみました。

私は,朝一のエル=バシャを手始めに,惑星,グランドキャニオン,福間洸太朗,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の田園,栗コーダーカルテット,小山実稚恵,そしてクロージングコンサートを聞いてきました。


■【K321】9:45〜 石川県立音楽堂邦楽ホール

ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第17番ニ短調,op.31-2「テンペスト」
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第15番ニ長調,op.28「田園」

●演奏
アブデル・ラーマン・エル=バシャ(ピアノ)


アブデル・ラーマン・エル=バシャさんについては,第1回のラ・フォル・ジュルネ金沢でベートーヴェンのピアノ・ソナタを2曲演奏して以来,私にとっては常に注目のピアニストでした。「ショパン」がテーマだった時の24の前奏曲での落ち着きと思索の深さを強く感じさせる演奏も印象的でした。

今回のベートーヴェンの2つのソナタでも,日常を超越したような世界が広がっていました。一見クールな雰囲気の中,時折,哲人が思黙考し,深遠な淵を見せてくれるような,他のピアニストにはない演奏を聞かせてくれました。「テンペスト」の演奏でも,一見,「嵐」とはかけ離れたような落ち着きのある世界が広がっていました。第2楽章での悟ったような静けさ,曲の形の美を聞かせるような乱れることのない最終楽章。有無を言わさぬ,説得力を持った演奏でした。

「田園」の方も全体に落ち着いたテンポで演奏されました。のどかな「田園」というよりは,日常を脱却した仙人が住んでいそうな,曇りのない澄んだ空気が広がる演奏でした。第2楽章には,哲学者が散歩をしながら思索を深めているような気分がありました。第3楽章でのひらめきに満ちた演奏,最終楽章でのゆったりと大きく広がる気分。俗世を超越した「田園」を聞いて,改めてすごいピアニストだな,と感じました。聞くたびに素晴らしいピアニストだなぁと感じます。エル=バシャさんのベートーヴェン,また聞いてみたいと思います。

続いて,ホルストの「惑星」を聞くために,コンサートホールへ。行ってみると,井上道義さんと月  さんによるプレトークを行っていました。面白いスライドを沢山使った,とても面白い内容でした。今年のラ・フォル・ジュルネ金沢で,最初にチケットが売り切れたのがこの公演だったそうです。

■【K311】11:30〜 石川県立音楽堂コンサートホール

ホルスト/組曲「惑星」op.32

●演奏
ナビル・シェハタ指揮新日本フィルハーモニー管弦楽団(コンサートマスター:豊嶋泰嗣)
プレトーク:井上道義(指揮者),月尾嘉男(東京大学名誉教授)

それにしても「惑星」は大編成です。石川県立音楽堂コンサートホールのステージは,OEKの本拠地ということもあり,そんなに広くはありません。各種楽器がぎっしりと詰まっている感じでした。

今回の指揮者は,ナビル・シェハタさんで,オーケストラは,新日本フィルハーモニー交響楽団でした。シェハタさんは,元々はベルリン・フィルのコントラバス奏者だった方とのことです。今年のラ・フォル・ジュルネ金沢には,元ベルリン・フィルのラデク・バボラークさんとベルリン・フィルの第1ヴァイオリン奏者の町田琴和さんも参加していましたので,ちょっとした同窓会になっていたのではないかと思います。

今回の演奏ですが,引き締まった筋肉質の「火星」から始まり(最初の部分のティンパニの硬質な音が印象的),大編成オーケストラの魅力を堪能できました。「金星」のしっとりとした雰囲気,リアルに音が飛び交う「水星」。こういった曲間のコントラストとダイナミックレンジの広さは,生で聞くと一層楽しめます。

「木星」では,たくましく歌われた「ジュピター」のメロディを中心に堂々とした広がりを感じさせてくれました。終盤の「土星」,「海王星」,「天王星」などは,前半の曲に比べると,これまであまり熱心に聞いてこなかったのですが,特に面白いと思いました。

特に「天王星」は,リズムの感じが,デュカスの「魔法使いの弟子」を思わせるところがあり,ついつい重ね合わせて聞いてしまいました。「天王星」の別名は「魔術師」ということで,本当に関係があるのかもしれません。打楽器群やテューバの迫力十分の活躍特に印象的でした。

「天王星」の最後には女声合唱のヴォカリーズが入ることになっていますが,東京のラ・フォル・ジュルネでも本物の合唱は使わず,今回は舞台裏の電子的な楽器(?)で代用していたようです。ちょっと滑らか過ぎるかな,という気はしましたが,こうやって聞くと,宇宙を舞台にしたSF映画音楽の元祖だなぁ,と実感しました。

終演後は,サイン会をやっていたので,もらってきました。別途いただいたクルデーレさんのサインも同じページに入っています。


「惑星」巡りの後は,昼食を取るために,「ホール」巡りは一休み。この日は,ANAホテルのサンドイッチセットを食べました。


その後,コンサートホールへ。

■【K312】13:30〜 石川県立音楽堂コンサートホール

武満徹/グリーン
グローフェ/組曲「グランド・キャニオン」

●演奏
井上道義指揮新日本フィルハーモニー管弦楽団(コンサートマスター:豊嶋泰嗣)


井上道義さんの指揮のグローフェ「グランドキャニオン」は,兵庫PACオーケストラとOEKの合同公演で聞いたことがあります。この曲については,「山道を行く」が特に有名ですが,近年は,CDでも実演でも,近年は軽視されてい気がします。今回,井上さん指揮による,じ〜っくりと風景を描いたような誠実でスケールの大きな演奏を聞いて,改めて名曲だなぁと実感しました。

堂々たるスケール感を持った「日の出」での壮大なクレッシェンド。宇宙的なスケール感を持った「赤い沙漠」。これらの曲を聞きながら,午前中に聞いた「惑星」の続編としての「地球」という曲を聴いているような気がしました。

「山道を行く」の最初の部分には,豊嶋さんによるカデンツァが入った後,パッカパッカ...とのどかな気分に。ロバが鳴くような音型がユーモラスなのは,井上さんらしいところです。弦楽器による美しい演奏が続いた後,最後の方で,満ち足りた一日を振り返るような感じでチェレスタの独奏が入りました。こういった楽器の使い方も冴えているなぁと思いました。

終盤の「日没」「暴風雨」になると,「ピカッ,ゴロゴロ」の世界が各種楽器を駆使して描かれます。最後の方では,雷を描写するような感じで,一瞬,照明をパッと明るくする,井上さんお得意の照明の演出がありました。

曲の最後の部分の締め方も気合い十分で,全曲を通じてじっくりとダイナミックに大峡谷の一日が描かれていました。

グローフェの「グランドキャニオン」に先立って演奏されたのが「グリーン」ということで,見事にGRで頭韻を踏んでいます。この曲を実演で聞くのは初めてなのですが,前衛的な作風だった頃の武満さんの音(シャーンという感じで金属をこするような音が入ったり)でありながら,どこか爽やかな空気を感じました。曲の最後の部分では,「チーン」という音が入っていましたので,ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」と通じる気分もあるなぁと思いました。井上さんの選曲のセンスは素晴らしいと思いました。

その後,今回初めてアートホールへ。


■【K333】14:45〜 金沢市アートホール
ビゼー/「ライン川の歌」から2曲(多分)
グリンカ(バラキレフ編曲)/ひばり
スメタナ(福間洸太朗編曲)/モルダウ
メシアン/「鳥の小スケッチ」〜「ヨーロッパ・コマドリ」
武満徹/雨の樹素描
リスト/2つの伝説(小鳥に説教するアッシジの聖フランシスコ,水の上を歩くパオラの聖フランチェスコ)
(アンコール)サン=サーンス(ゴドフスキー編曲)/白鳥
(アンコール)ラモー/鳥のさえずり

●演奏
福間洸太朗(ピアノ)


福間洸太朗さんの公演は,ナチュールのテーマどおりのこだわりの選曲でした。自然,動物,川,水などにまつわる曲がバランス良く並んでいたのに加え,技巧的な作品,音色の面白さを聞かせる現代的な作品などがうまく配列されていました。


演奏された曲の中では,まず,福間さん自身が編曲した「モルダウ」が大変聞きごたえがありました。さり気なく始まった後,有名な「あのメロディ」が豪華絢爛たる雰囲気で盛り上がっていきました。モルダウは一種変奏曲のようなところもあるので,リストの時代によくあった,「モルダウ・パラフレーズ」という感じで楽しむことができました。

メシアンと武満徹の作品は,続けて演奏されました。というか,いつの間にか武満作品に移行していました。どちらもキラキラとした音色が大変詩的に響いていました。

最後のリストの2つの伝説は,このアートホールで聞くと大迫力です。タイトルどおり宗教的な威厳を感じさせると同時に,リストらしく,激しく格好良く盛り上がって行きました。福間さんの演奏を聞くのは今回が初めてでしたが,その雰囲気どおり,大変折り目正しく清々しい雰囲気を持った演奏を聞かせてくれました。

今回のプログラムには「〜編曲」といった作品が数曲含まれていました。これらの技巧的で標題のある小品の数々を聞きながら,SPレコード時代の個性派揃いのヴィルトーゾ・ピアニストの時代を現代的に蘇らせてくれているような印象を持ち,大変面白いと思いました。

アンコールで演奏された2曲については,終演後のサイン会の時に確認をしたものです。華やかに装飾された「白鳥」の方はゴドフスキー編曲ということで,なるほど,と思いました。2曲目のラモーはスピード感たっぷりの曲で,ロマン派の作品に紛れ込ませても,全く違和感なく楽しむことができました。
 ←NAXOSから出ている「武満徹ピアノ作品集」のCDにサインをいただきました。

福間さんの演奏,そして選曲には,今後も注目していきたいと思います。

石川県立音楽堂に戻り,今年のラ・フォル・ジュルネ金沢を城に例えれば,「本丸」と言っても良い公演を聞いてきました。井上道義指揮OEKによるベートーヴェンの「田園」でした。お客さんも大入り満員でした。


■【K313】16:00〜 石川県立音楽堂コンサートホール

ベートーヴェン/交響曲第6番へ長調, p.68「田園」

●演奏
井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサートミストレス:アビゲイル・ヤング)


この作品は,「ナチュール」のテーマでは絶対欠かせない曲です。OEKが何回も演奏している作品ということで,第1楽章〜第2楽章に掛けては,音楽が自発的に流れていくような「自然さ」がありました。本拠地での演奏ということでOEKの音のまとまりの良さ,心地よさは絶品でした。フレーズの歌わせ方の随所に自然な遊びがありました。第2楽章のまどろむような「ゆるさ」に浸りながら,静かに日常生活を送ることのできる幸福感を感じました。

第3楽章以降は様相が変わります。3楽章の途中でティンパニ,トロンボーン,トランペット,ピッコロが入ってくる(「チーム嵐」でどう?)という井上さんならではの「目立たせる工夫」がされていました。演奏前から,上手側に空き座席があったので「チーム嵐」が途中で入ってくることは予想できたのですが,後から振り返ると,非常に象徴的な演出に思えました。

お祭りで浮かれている予期せぬ状態で「嵐」が乱入してくる...というのは,自然災害そのものだと思いました。菅原さんのティンパニのリアルさが平和な日常を吹き消し,立って演奏していたトロンボーンやピッコロなどがドラマ性を強調していました。

そして第5楽章になります。弦楽器が演奏する主題の滑らかさが本当に美しく響いていました。この楽章は「感謝」の楽章です。井上さんはその感謝の頂点の部分で,大きく両手を広げて指揮をされていました。最後は深い感謝の気持ちを噛みしめつつ,ゆっくりと終わりました。井上/OEKの「いつもの田園」を新鮮に聞かせてくれたのが何よりも素晴らしいと思いました。

続いて時間調整も兼ねて邦楽ホールで行われた,栗コーダーカルテットの公演へ。実は...昨晩の「花の章」公演の払い戻しがこれに化けました。

下の写真は音楽堂前です。ゲント市からの金管アンサンブルの演奏です。こちらも大盛況でした。



■【K324】17:15〜 石川県立音楽堂邦楽ホール
関島岳郎/カントリーマーチ
中山晋平/砂山
栗原正己/消えたかに道楽
関島岳郎/午前三時の植物園
レスピーギ/組曲「鳥」〜ナイチンゲール
関島岳郎/海を渡る風
川口義之/Up on a Moonhill : 桂林を下って月の丘に昇る
イギリス民謡(2曲)
青空節
(アンコール)ピタゴラスイッチのテーマ

●演奏
栗コーダーカルテット(栗原正己,川口義之,関島武郎),タバティ


栗コーダーカルテットがナチュールに関係あるのかは不明ですが,「自然体」の演奏ということでナチュールなのかもしれません。「カルテット」といいつつ,現在は3人で活動しているそうで,今回は「ビューティフルハミングバード」という男女デュオグループのタバティさんという方がギターやウクレレで参加していました。


この4人ですが,かなり沢山の楽器を持ち替えて演奏していました。ソプラノ・リコーダー,ソプラニーノ・リコーダー,アルト・リコーダー辺りは私にも分かったのですが,ファゴット並みに大きなリコーダーがあったり,小型のサクソフォーンを使っていたり,その組み合わせを見るだけで楽しめました。リコーダー類に加えて,鍵盤付きハーモニカも時折登場していました。その合奏を聞きながら,「小学校時代の音楽の時間」などを懐かしく思い出してしまいました。

音楽のベースを支えていたのが,ギター,ウクレレやテューバです。テューバは全部の曲に入っていたわけではありませんが,このリコーダーとテューバの組み合わせというのは,とても良いと思いました。ベースの安心感と自在に軽やかに動き回る高音部とのバランスが良く,のんびりととぼけた,実に良い味を出していました。

演奏された曲は,栗コーダーカルテットのオリジナル作品が中心でした。彼らのアルバムに『笛社会』というものがあり,今回もその中から演奏されていましたが,その演奏を聞きながら,情け容赦のない競争社会とは別の次元の「笛社会」というのがあるのかも,などと思ってしまいました。

今回はオリジナル作品以外にも,軽快なイギリス民謡であるとかレスピーギの「鳥」の中の1曲など,クラシック音楽的な作品も演奏されました。個人的には,「楽しめるリコーダー演奏」といえば,ケンブリッジ・バスカーズを思い出します。今後はクラシック方面にもレパートリーを増やしていってくれるといいなぁと感じました。

終演後は,サインもいただいてきました。
 ←デビュー20周年のベスト盤を会場で購入し,サインをいただきました。メンバーの方は,「年がいもなく,ジャンプしてます」とサインしながら語っていました。


ボードの写真もどんどん増えています。

■【K314】18:30〜 石川県立音楽堂コンサートホール
1) チャイコフスキー/歌劇「エフゲニー・オネーギン」op.24〜ポロネーズ
2) チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番変ロ長調, op.23
3)(アンコール)スクリャービン/左手のための小品(タイトル不明)

●演奏
アレッサンドロ・クルデーレ指揮プチョン・フィルハーモニック・オーケストラ*1-2,小山実稚恵(ピアノ)*2-3

コンサートホール公演の最後は,小山実稚恵さんのソロによるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を中心としたプログラムでした。この公演が,ラ・フォル・ジュルネ金沢の実質的なトリということになります。小山さんは,いつもどおりの迫力のある打鍵でしっかりと地に足が付いた堂々たる貫禄を持った演奏を聞かせてくれました。第1楽章での大胆さ,力強さ,押し出しの強さは流石でした。さらに第3楽章最後のコーダの部分では,ピアノの音がさらに一段パワーアップし強烈な打鍵の連続で締めてくれました。金沢だと,この曲を実演で聞く機会自体が少ないこともあり,会場は大いに盛り上がりました。

クルデーレさん指揮のプチョン・フィルの生きの良い演奏と一体となった「祭りの最後」に相応しい演奏だったと思います。

演奏後,アンコールが1曲演奏されました。スクリャービンが左手だけで演奏するために書いた曲で,過去何回かアンコールで聞いたことのある作品です。この曲だけは1階席の後方で聞いたのですが,その高級感のある音が素晴らしいと思いました。左手だけで高音を演奏すると,体を大きく傾ける必要があります。そういった点も含め,満員のお客さんを堪能させてくれるようなアンコールでした。

その後,一気に交流ホールに向かい,クロージングコンサートに参加してきました。

↓残るはクロージング・コンサートだけ




■【クロージングコンサート】19:45〜 石川県立音楽堂交流ホール

1) ドヴォルザーク/序曲「謝肉祭」op.92
2) シュトラウス,J.II/ポルカ「雷鳴と稲妻」
3) ウィリアムス/映画「スター・ウォーズ」メインタイトル
4) ドヴォルザーク/歌劇「ルサルカ」〜「月に寄せる歌」
5) ムソルグスキー/蚤の歌
6) シューベルト/野ばら, D.257
7) ムソルグスキー(ラヴェル編曲)/組曲「展覧会の絵」〜「ババ・ヤガーの小屋」「キエフの大門」

●演奏
井上道義*4-7; ヨンミン・パク*1; アレッサンドロ・クルデーレ*2-3 指揮オーケストラ・アンサンブル金沢祝祭管弦楽団,ヤーナ・ボルコヴァ(ソプラノ)*4,森雅史(バス)*5-6

例年通り,この公演の時だけは,交流ホールの壁面を取り払い,大勢のお客さんが既に入っていました。


クロージングコンサートは,今回登場した3人の指揮者+歌手2名+OEK祝祭管弦楽団による楽しいステージでした。ホールの響きは相変わらずデッドですが(やはり,昨年よりもステージの高さが少し変わった気がしますが...気のせい?),オケを間近に取り囲んでのステージは聴衆の一体感を高めてくれます。

ヨンミン・パクさん指揮のドヴォルザークの序曲「謝肉祭」の快活な演奏で始まった後,シュトラウスの「雷鳴と稲妻」がアレッサンドロ・クルデーレさんの指揮で演奏されました。この演奏では,途中で「サプライズ」がありました。演奏の途中,OEKメンバーが隠していたビニル傘を開き,音楽に合わせて動かしていました。丁度,ヤクルトスワローズの応援団が東京音頭に合わせてビニル傘を動かすようなイメージです。クルデーロさんには知らされていなかったようで,和やかな雰囲気に包まれました。

↓下の写真は「リハーサル」のものです。この時は「ビニール傘」は出てこなかったのだと思います。


演奏された曲の中では,通常のOEKでは,演奏することはまずない,「スター・ウォーズ」のメインタイトルがとても新鮮でした(かなり以前,ボブ佐久間さんや渡辺俊幸さん指揮で聞いたことがあるかも)。

その後登場したソプラノのヤーナ・ボルコヴァさんとバスの森雅史さんの声も素晴らしかったですね。特にボルコヴァさんの声は間近で聞くと音が強くダイレクトに飛び込んでくるようで圧倒的でした。森さんの方は,ムソルグスキーの「蚤の歌」を堂々かつコミカルに,動作を交えて歌ってくれました。

その後,森さんの主導で,シューベルトの「野ばら」を皆で歌いました。実は,「蚤の歌」もゲーテの「ファウスト」に由来するということで,つながりがあります。昨年のクロージング・コンサートで歌った「ハレルヤコーラス」の方は,即席で歌うには難易度が高かったのですが,「野ばら」ならば,私でも歌えました。ドイツ語の歌詞でも皆さんほぼ大丈夫そうでした。

今回のラ・フォル・ジュルネ金沢では,大曲が多かったこともありOEK祝祭管弦楽団が大活躍でした。最後に井上さん指揮で「展覧会の絵」の「バーバ・ヤガーの小屋」「キエフの大門」が演奏されました。この曲と「自然」のつながりは...実はよく分からなかったのですが,鳴り物入りで華やかに締めてくれました。

このOEK祝祭管弦楽団については,是非継続していって欲しいと思います。例えば,5月以外にも9月(音楽堂アニバーサリーなど)にも登場し,大曲を演奏するのもありかもしれません。POPSオーケストラとしてジョン・ウイリアムズ特集の公演をい行っても面白いと思います。

今年のラ・フォル・ジュルネ金沢は,テーマの面では「何でもあり」の気配はありましたが,例年通り,充実した内容だった思います。毎年,クロージング・コンサートでは,祭の後の寂しさを感じます。それと同時にOEKは金沢市民にしっかり愛されていると実感できます。この気分を味わうために参加しているようなところもあります。関係者の皆様,ありがとうございました。

 

(2016/05/15)