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La Folle Journee au Japon
「熱狂の日」音楽祭2007:民族のハーモニー
バルトーク:弦楽のためのディヴェルティメント,ピアノ協奏曲第3番
2007/05/05 14:30- 東京国際フォーラム ホールC(カフカ)
1)バルトーク/弦楽のためのディヴェルティメント
2)バルトーク/ピアノ協奏曲第3番Sz.119
●演奏
フランソワ=クサヴィエ・ロス指揮レ・シエクル
ジャン=フランソワ・エッセール(ピアノ*2)

Review by 管理人hs  

この日聞いた最後の公演はホールCで行われたバルトーク・プログラムでした。このホールは素晴らしいホールでした。内装は木が主体で,ホール全体にもウィスキー樽を思わせるような暖かみのある雰囲気がありました。今回は3階席で聞いたのですが,ステージもよく見え,音も大変よく聞こえました。この日の午前中にホールB7で聞いたレ・シエクルを再度聞くことになったのですが,このオーケストラ本来のしっとりとした響きを楽しむことができました。来年も「ラ・フォルジュルネ」に行くことがあれば,このホールCでの公演を主体に選ぼうかなと思いました。

曲目はバルトークの曲2曲ということもあり,客層にもどこかマニアックな雰囲気がありました。演奏に先立って指揮のロスさんが,演奏曲順変更のアナウンスを行うと同時に(午前中と全く同じでした),今回,作曲当時の楽器すなわちガット弦を張った楽器を使っているという説明をされました。

最初に演奏されたディヴェルティメントは,過去,オーケストラ・アンサンブル金沢とリスト室内管弦楽団の演奏で聞いたことがありますが,今回の演奏はガット弦を使っていることも関係しているのか,切れ味の鋭さと同時に深みを感じさせてくれました。第1楽章冒頭部の一糸乱れぬ速いテンポもすごかったのですが,第2楽章の底知れぬ深さも大変印象的でした。この,レ・シエクルという団体は,2003年にできたばかりの若いオーケストラですが,演奏に対する知的な好奇心が,演奏の積極性となってストレートに表れているのが素晴らしいと思いました。

2曲目のピアノ協奏曲第3番は編成が大きくなり,2管編成にトロンボーン3本が加えられていました。ホルンも4本に増強されていました。この曲を生で聞くのは初めてのことでしたが,バルトークの最晩年の作品ということもあり,外に発散されるエネルギーよりは,静かな叙情性を感じさせてくれるような曲でした。ガット弦による落ち着いたくすんだムードも曲想にぴったりでした。ピアノのエッセールさんの音も,このオーケストラの音と見事に溶け合っていました。

第2楽章は大変静かで祈りの気分を感じさせてくれました。楽章後半での鳥の声を思わせるような木管楽器の音とピアノによるやり取りも絶妙でした。演奏全体に漂う立体感は生ならではの面白さでした。

第3楽章もまたピアノとオーケストラが一体となった生きた音楽を聞かせてくれました。終結部をはじめとして,トロンボーンやティンパニといった楽器が活躍するのですが,その深みと凄みを感じさせる存在感のある音も大変効果的でした。演奏後,ロスさんはティンパニ奏者のところまで駆け寄って握手をしていましたが,会心の演奏だったのではないかと思います。

バルトークの曲2曲ということで,今回聞いた他のプログラムよりは渋い雰囲気はありましたが,その分,大変聞き応えがありました。ラ・フォルジュルネ は短期間の間に恐ろしく沢山の演奏会を行うイベントなのですが,粗製濫造になるのではなく,お祭り的な熱気が相乗効果を生んで熱い演奏の連鎖を生んでいるようなところがあると思いました。今回,聞いた4公演の中では,ホールの響きの良さもあり,特に聞き応えがあったのがこの演奏会でした。 (2007/05/07)

このホールの提供はSOYJOYという大塚製薬のお菓子でした 終演後,このお菓子を配っていました。 こんなお菓子でした。 ホール前の窓からネオ屋台村付近を見たものです。



ホールC カフカ
席数:1490
CとDの入口のサインです。


ホールCへの入口


ホールCの掲示板


とても良い雰囲気のホールでした。