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今野淳コントラバス・リサイタル
2010/03/12 金沢市アートホール
1)ボッテシーニ/パッショーネ・アモローザ
2)エクレス/ソナタ 
3)伝バッハ,J.C./アダージョ
4)モンターク/間奏曲
5)ティボール/主題と変奏曲
6)クーセヴィツキー/悲しい歌 op.2
7)クーセヴィツキー/小さなワルツ op.1-2
8)ボッテシーニ/大二重協奏曲
8)(アンコール)アイルランド民謡/ロンドンデリーの歌
●演奏
今野淳(コントラバス),坂本久仁雄(ヴァイオリン*1,8,9),鶴見彩(ピアノ)

Review by 管理人hs  

オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のコントラバス奏者,今野淳さんのリサイタルに出かけてきました。後にも先にも”コントラバス・リサイタル”という名前の演奏会に行くのは初めてのことでしたが,OEKの創設時からのメンバーとして,文字通り,縁の下の力持ちとしてオーケストラを支えてきた今野さんならではの演奏会でした。

コントラバスは,メロディを担当することが少なく,音程を取るのも難しい楽器なので,ソロ・リサイタルを行うのが難しいところがあります。今回も,楽器が大きい分,見るからに「演奏が大変そう」という部分はありましたが,聞いているうちにそれが不思議な味わいとなって感じられるところもありました。時々,ドスを効かせるような低音が入ったかと思うと,とぼけたようなのどかな雰囲気になったり,演奏の動作同様に,”ダイナミックな室内楽”となっていました。

今回はOEKのヴァイオリン奏者の坂本さんとピアニストの鶴見さんも出演されていまたが,この3人による,ボッテシーニの曲で始まりました。コントラバスの音については,どうしてもヴァイオリンに比べると音程がぴたりと定まらないので,大きくあくびをするように「の〜んびり」という感じになってしまうのですが,坂本さんの装飾的なヴァイオリンと鶴見さんのしっかりとしたピアノの音が絡んで来ると,ビシっと締まります。もともとイタリアっぽい明るい曲想でしたが,高音と低音とが織り成すちょっとぎこちない質感を楽しむことができました。ちなみに今回は,元々2台のコントラバス用のものをヴァイオリンとコントラバス用に編曲して演奏されていました。

2曲目と3曲目は,プログラムに書いてある曲順と逆になっていたと思います。プログラムでは,2曲目がクリスチャン・バッハのアダージョとなっていましたが,3楽章からなる曲だったので,恐らく,こちらがエクレスのソナタだったのだと思います。古典的な構成の曲でしたが,コントラバスで演奏すると,どこか大きく膨張するようなところがあり,「規格外」という感じになるのが面白いところです。3曲目のアダージョの方は,重低音の威力がしっかりと発揮された曲でした。大きく揺らぐ心地よさに,ついついウトウト(?)してしまいそうでした。

後半は比較的短い作品で始まりました。モンタークの間奏曲とティボールの主題と変奏曲は,どちらもハンガリーの作品ということで,旋律的に親近感を感じました。モンタークの方はシューベルトの「楽興の時」辺りに通じるユーモアと哀愁を感じました。ティボールの方は,宮崎駿のアニメ映画に使われていそうな感じの曲でした。途中,コントラバスお得意のピツィカートが入る部分がありましたが,ソロで聞くと迫力たっぷりで,「本領発揮!」という聞き応えがありました。

続いて指揮者としても有名なクーセヴィツキーの小品が2曲演奏されました。クーセヴィツキーといえば,コントラバス協奏曲で有名ですが(昨年の新人登竜門コンサートで岡本潤さんが演奏して曲です),今回演奏された2曲もチャイコフスキーの弦楽器を小品を思わせる魅力的な作品でした。

演奏会の最後は,再度坂本さんのヴァイオリンを加えた3人編成でボッテシーニの作品が演奏されました。この曲は,プログラムの解説に書いてあったとおり,小さなオペラ風の作品で,大変起伏の大きな作品でした。序奏のピアノからして,かなり大げさな感じでしたが,全曲を通じてこの調子で,ヴァイオリン,コントラバスともども華やかな技巧を見せてくれました。やはり,坂本さんのヴァイオリンの方はコントラバスに比べると大変スマートで闊達なので,今野さんのパートになるとガンバレ!と応援(?)したくなるところもありましたが,ピアノを加えての三つ巴の絡み合いには大変迫力がありました。

アンコールでは,先日の宮川彬良さんの登場したOEKの定期公演で聞いたばかりの「ダニー・ボーイ」が3人編成で演奏されました(正式名称はロンドンデリーの歌ですが,この演奏会を聞いてからは,「ダニーボーイ」と呼びたくなります)。

今回のプログラムに「コントラバスの独り言」という面白い文章が書かれていたのですが(恐らく,今野さんによる文章だと思います),それによると,コントラバスにはオーケストラ用,ソロ用,ジャズ用の3種類の弦があるとのことです。今回はソロ用の弦に張り替えていたのですが,この「ダニーボーイ」では,この弦による歌の魅力を聞かせてくれました。コントラバスのソロで始まった後,メロディがヴァイオリンに移って行くのですが,坂本さんのヴァイオリンの熱い音も印象的でした。

OEKの定期公演に通って20年以上になりますが,今野さんがいないことは,まずない気がします。コントラバスという楽器は地味な存在ですが,今野さんはOEKにとって欠くことのできない「風景の一部」になっていると思います。プログラムの手作り感(3つ折りリーフレットだったのですが微妙に折り目がずれていたのがちょっと微笑ましい感じでした)や会場全体にあったアットホームな空気から,そのことを実感できた演奏会でした。



演奏会後,JR金沢駅に行きました。

全国ニュースでも再三放送されていましたが,寝台特急「北陸」と急行「能登」が時刻表の改正でこの日限りで廃止になるということで,大勢の鉄道ファンが集まってきていました。セレモニーまでまだ時間がありましたが,コンコースでは既に記念グッズの販売などをしていたので,その様子を撮影してきました。

能登号の自由席の乗客へのお知らせです。
こちらはホームでの撮影者に対するお知らせです。まだ21:00前でしたが,既にホームには大勢の人がいたのかもしれません 報道関係者(テレビ関係が多かったですね)も沢山来ていました。
記念グッズ売り場も出来ていました。 数千円するものもあったようです。 これはまた別の売り場の写真です。
「ありがとう北陸号」の展示パネル こちらは「ありがとう能登号」の展示パネル 両列車についての思い出を綴ったメッセージを掲示するコーナーもありました。
 
 (番外)
 以前「北陸号」に乗ったときの記録です。
 
2008年6月27日北陸号に乗車してみました(上野〜金沢)
私も記念ストラップ(¥500)を買ってしまいました。購入証明書というものももらいました。購入番号もついていましたが,そのうち価値が出て来るのかもしれません。
 (2010/03/14)

関連写真集

公演のチラシです。