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いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2017 レビュー・トップページ
いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2017
2017年4月28日〜5月5日 石川県立音楽堂,金沢市アートホール,JR金沢駅周辺,金沢市内各地

Review by 管理人hs  

4月30日(日) 吹奏楽の日,北陸市民オーケストラの祭典

4月30日の午前中は,ラ・フォル・ジュルネ金沢の時からの恒例,「吹奏楽の日」公演をしいのき迎賓館裏の緑地で聞いてきました。



【無料公演】9:30〜16:00頃 ※11:00頃〜午前の部のみ参加
吹奏楽の祭典

この日は快晴すぎるくらいの快晴で,空を見上げると大変爽快だったのですが,風が大変強く,サポート役の遊学館高校のメンバーは,例年に増して大変そうでした。それでも「野外演奏を芝生の上で聞く」という気持ちよさは他に変えられないものがあります。今年も爽やかな気分の演奏を楽しんできました。

私が到着した時は百萬石ウィンドオーケストラの皆さんが演奏中でした。


その後,小松明峰高校吹奏楽部のステージ。いつもどおり,合唱とダンスと吹奏楽が一体となった,「風になりたい〜宝島」のメドレーを楽しませてくれました。


続いて,お隣福井県の福井工業大学附属福井高校吹奏楽部。紙のプログラムに書かれていた曲から予定を変更し,昨年ヒットした「恋」などをダンス付きで披露していました。


午前中最後は,富山商業高等学校吹奏楽部。音楽祭のテーマにふさわしく,ベートーヴェンの第九の第4楽章をゴスペル風に編曲した,「ジョイフル,ジョイフル」などを楽しませてくれました。赤いシャツにぴったりの雰囲気でした。



司会は青島広志さんが担当していたのですが,意外なところに突っ込みを入れていましたので,吹奏楽公演については,「いつもの方」の方が良かったかなと思いました。

午後からは,石川県立音楽堂コンサートホールで今回初の企画である「北陸市民オーケストラの祭典」を聞いてきました。

14:00〜15:00 石川県立音楽堂コンサートホール
北陸市民オーケストラの祭典

1) ベートーヴェン/「エグモント」序曲
2) ベートーヴェン/ロマンス第2番
●演奏
大久保譲指揮金沢交響楽団,大久保秋子(ヴァイオリン*2)

ベートーヴェン/交響曲第第3番変ホ長調「英雄」〜第3,4楽章
●演奏
花本康二指揮石川フィルハーモニー交響楽団

ベートーヴェン/交響曲第4番〜第1楽章
ブラームス/ハンガリー舞曲第1番
●演奏
桶谷篤夫指揮金沢室内管弦楽団

1) ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」〜第5楽章
2) ガーシュウィン/ラプソディ・イン・ブルー
●演奏
山口泰志指揮メディカルオーケストラ金沢
伊勢拓之(ピアノ*2)

ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調, op.67「運命」

鈴木織衛指揮総勢120名による合同演奏(金沢交響楽団,石川フィルハーモニー交響楽団,金沢室内管弦楽団,メディカルオーケストラ金沢,小松シティフィルハーモニック,管弦楽団オルビスNOTO)


タイトルとしては,「北陸」となっていましたが,実際には石川県内で活動している金沢交響楽団,石川フィルハーモニー交響楽団,金沢室内管弦楽団,メディカルオーケストラ金沢,小松シティフィルハーモニック,管弦楽団オルビスNOTOのメンバーが登場し,総勢100名以上でベートーヴェンの「運命」(全曲)を演奏する,という「お祭り」らしい企画でした。

100名以上の演奏というと,大げさで重苦しいものになるような気もしたのですが,弦楽器のトップにOEKのメンバーを配していたこともあり,アンサンブルの乱れもなく,見事な「運命」を聞かせてくれました。指揮の鈴木織衛さんの作る音楽は,いつもとても流れが良いのですが,これだけの大編成になっても,そのことは変わらず,理想的なプロポーションとボリューム感を持った,完成度の高い音楽を聞かせてくれました。

やはり第3楽章から第4楽章に掛けての暗から明への変化,弱奏から強奏への変化の鮮やかさが見事でした。明るく太陽が昇ってくるような聞き映えのする演奏になっていました。余裕のあるクライマックスも素晴らしかったのですが,第2楽章や第3楽章の最初の方の,低弦の大編成での弱奏も何ともいえずゴージャスでした。オーボエをはじめとした木管楽器のソロもくっきりと聞こえました。

「市民オーケストラの合同演奏」というのは,なかなか難しい企画ではあると思うのですが,今回の演奏を聞いて,機会があればまた聞いてみたいと思いました。

前半は今回の合同演奏に参加した団体の中から,金沢交響楽団,石川フィルハーモニー交響楽団,金沢室内管弦楽団,メディカルオーケストラ金沢が,それぞれ20分程度ずつ,ベートーヴェンの交響曲の楽章の一部などを中心とした演奏を聞かせてくれました。この中で特に印象に残ったのは,(これはベートーヴェンではなかったのですが)伊勢拓之さんのピアノと山口泰志指揮メディカルオーケストラ金沢が演奏した,ガーシュインのラプソディ・イン・ブルーでした。

演奏時間的には「抜粋で演奏するのかな?」と思っていたのですが,サックス3本を加えた全曲の演奏をしっかりと聞かせてくれました。伊勢さんのまとまりが良く,リラックスした味わいのあるピアノも良かったのですが,気持ちよく音が鳴り切っていたメディカルオーケストラ金沢の音が素晴らしいと思いました。

驚いたことに,この演奏会も青島広志さんが司会でした(私と同じタイミングで行動していたようです)。青島さんは「最後なので,演奏が終わったら,立ち上がってスタンディングオベーションをしましょう」と呼びかけたところ,ラプソディの後,見事に皆さん立ち上がってくれました。これはお世辞ではなく,本当に良かったなぁというお客さんの気持ちの表れだったと思います。

というわけで,演奏者とお客さんの双方ともに最高に気持ちの良かった公演でした。最後にガルガンチュア君も登場しましたが,日に日に,音楽祭に馴染んできている気がします。新音楽祭の前半を大きく盛り上げる良い公演だったと思います。