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いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2017 レビュー・トップページ
いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2017
2017年4月28日〜5月5日 石川県立音楽堂,金沢市アートホール,JR金沢駅周辺,金沢市内各地

Review by 管理人hs  

5月5日(金・祝) 本公演3日目



ガル祭最終日も9:45スタートで,夜9:00頃終演だったクロージング・コンサートまで聞いてきました。

【C31】9:45〜 石川県立音楽堂コンサートホール
1) ベートーヴェン/ピアノ協奏曲2番
2) ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第14番「月光」

●演奏
近藤嘉宏(ピアノ)
チー・チン・ヤン指揮高雄市交響楽団*1

この日は近藤嘉宏さん+チーチン・ヤン指揮高雄市響によるピアノ協奏曲第2番でスタート。OEK定期公演でも演奏されたことのない(はず)の作品を,じっくり端正に聞かせてくれました。オーケストラの明るく伸びやかな響きが疲れた体(何故か朝から疲れ気味なのですが...最終日なので仕方ないですね)に染みました。特に第2楽章の端正に弾き込まれた演奏が素晴らしく,充実した時間を堪能できました。

その後,近藤さんの独奏で「月光」が演奏されました。安定した静の世界から,エネルギーの満ちた動の世界へと鮮やかに推移していく演奏でした。派手すぎることなく,全体にがっちりとした聞きごたえがあるのが,近藤さんらしいと思いました。

今回,公演パンフは3会場ごとにまとめられていました。サイン会の様子を観ていると,このパンフが「御朱印帳」化している人多数。私もそうなのですが...サイン集めは癖になるので,リピーター作りには良いセールスポイントになると思います。

東京のラ・フォル・ジュルネと金沢の音楽祭のいちばんの違いは,会場のコンパクトさ・密度の高さだと思います。公演終了後,サイン会を行い,アーティストと会話し,そのまま次会場へという流れが定番化。聞き手の内側からテンションを上げてくれます(実は...この3日間高血圧気味)

左上が高雄市響の指揮者チー・チン・ヤンさん,左下がピアニストの近藤嘉宏さん,右上が指揮者のユベール・スダーンさん。右下は広上淳一さん用に空けておいたのですが,運悪く遭遇できませんでした。


セット券を購入した人向けのプレゼント企画の当選番号を発表していました。

 

【H31】11:00〜 石川県立音楽堂邦楽ホール
ベートーヴェン/ピアノ三重奏曲第7番「大公」

●演奏
アン・アキコ・マイヤース(ヴァイオリン),クリスティーナ・クーパー(チェロ),バリー・ダグラス(ピアノ)


バリー・ダグラス,アン・アキコ・マイヤース,クリスティーナ・レイコ・クーパーによる,見るからにゴージャスな雰囲気を持った3人による堂々たる「大公」でした。見た目だけではなく,演奏の方もソリスト同士が主張しあう演奏で,ヴァイオリン・ソナタとチェロ・ソナタを一緒に楽しんだような充実感がありました。

第3楽章は,ダグラスさんによるしみじみとしたソロで始まった後,静かな陶酔の世界へ。そして,最後はダイナミックな気分の中,締めてくれました。音楽祭ならではの,華やかな室内楽を楽しむことができました。往年の,ハイフェッツ,ルービンシュタイン,フォイアマンによるピアノ・トリオは,「百万ドルトリオ」などと呼ばれていたことがありますが,さしずめ「百万石トリオ」といったところでしょうか。

アンさんは,オープニングからクロージングまで,バリーさんは協奏曲,ソロ,室内楽とフル出演。特にこのお2人は,今回の新音楽祭のMVP的な活躍をされたと思います。

終演後,豪華メンバーによるサイン会も行われました。
 

バリー・ダグラスさんには出店していたタワーレコードで購入したCDに。ブラームスやシューベルトのCDも売っていましたが,気分を変えて,シャンドスから発売されている「Celtic Airs」を購入

バリー・ダグラスさんのCeltic Airですが,いきなり尺八のような音が聞こえてきたので何かと思ったらアイリッシュ・フルートの音でした。メロディラインにも哀愁があり,音楽堂「やすらぎ広場」あたりでの和洋共演にそのまま使えそうでした


アン・アキコ・マイヤースさんには,岩城OEKと共演したブルッフのCDに。「Souvenir」と言われた後,結構やんちゃにサインしていただきました。
 

チェロのクリスティーナ・レイコ・クーパーさんにはリーフレットにサインをいただきました。


交流ホールでは,北陸学院の皆さんがハンドベルを演奏中


音楽堂前ではフルート四重奏



【C32】12:15〜 石川県立音楽堂コンサートホール
ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」

●演奏
ユベール・スダーン指揮オーケストラ・アンサンブル金沢


OEKの「田園」は,昨年も演奏されたのですが,今年も大入りでした。やはりお客さんはOEKの演奏を心待ちにしているのだなと思いました。スダーンさんの指揮は一見正統的でありながらアイデアに溢れていました。節度のある雰囲気の中,時折,テンポを揺らし,多彩なニュアンスを感じさせてくれました。

第2楽章は,木管楽器が花が咲くように活躍し,のどかで明るい風景がを見るように楽しむことができました。楽章最後の「カッコウ」の部分のくっきりとした演奏も印象的でした。

第4楽章の「嵐」は,ティンパニの強打がビシッと決まる,実に音楽的な「嵐」でした。そして,最終楽章は,ここでもニュアンスが大変豊かでした。楽章の最後の方で,大きく盛り上がる部分での実感のこもった暖かさが感動的でした。

この演奏では,ホルンの金星さんが,2種類のホルンを使い分けていたのも印象的でした。終演後のサイン会を活用してスダーンさんにお尋ねしたところ,これはスダーンさんのアイデアとのことでした。3楽章では野性的な音と酔っぱらったような(?)甘い音を2倍楽しめました。

この頃は音楽堂内は大賑わいでした。


北陸学院のハンドベル。今度は音楽堂前広場で演奏中。


【C33】:〜 金沢市アートホール
ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第7番ハ短調「アレクサンダー」
クライスラー/愛の喜び
クライスラー/愛の悲しみ
シューベルト(リスト編曲)/セレナード
クライスラー/ウィーン奇想曲

●演奏
ノエ・乾(ヴァイオリン),鶴見彩(ピアノ)


久しぶりに行った,アートホール公演ではノエ・乾さんと鶴見彩さんによる,ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第7番他が演奏されました。

右側は曲目変更のお知らせです。
 

ノエさんのヴァイオリンは,音楽堂コンサートホールで聞いた時よりは,ダイナミックさと勢いを感じました。ノエさんは,演奏前のトークで,ヴァイオリン・ソナタ第7番について「演じているような曲」と語っていましたが,そういった気分を持った雄弁な演奏でした。

後半はクライスラーを中心とした,リラックスして楽しめるウィーンの音楽が演奏されました。ここでも気軽さだけではなく,前向きなエネルギーがしっかりと伝わってきました。

この公演は,ノエさんによるトークを交えていました。こういうトーク入りの器楽公演は,もう少しあってもよいかもしれないですね。

【C33】15:15〜 石川県立音楽堂コンサートホール
ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱付き」

●演奏
広上淳一指揮ベルリン・カンマーシンフォニー&オーケストラ・アンサンブル金沢合同祝祭管弦楽団,竹多倫子(ソプラノ),鳥木弥生(メゾ・ソプラノ),ジョン・健・ヌッツォ(テノール),甲斐栄次郎(バリトン),北陸第九祝祭合唱団

広上淳一指揮のベルリン・カンマーシンフォニーとOEKの合同オケ+この日のために特別に編成された合唱団による第9。満席の注目公演で,この音楽祭のクライマックスを作る目玉公演でした。



大変元気で熱気に溢れた力強い合唱を楽しめたのですが,演奏全体としてはやや大味な印象でした。広上さんのテンポは,かなりゆったりとした設定でしたが,OEKによるベートーヴェンの「田園」を聞いた後だと,どうも反応が鈍い印象に感じました。オーケストラは,ベルリン・カンマーシンフォニー中心の編成でしたが,ここはOEK中心の方がまとまったのではないかなと感じました

第4楽章の方は,充実した声をもった4人の独唱者を含め,歌の方は大変テンションが高かったのですが,ところどころ「演奏が崩壊しそう?」と思わせる部分があり,聞いていて結構スリリングでした。それでも,色々な困難を越えてのコーダの部分の重厚な盛り上がりは素晴らしく,さすがという響きで締めてくれました。

今回の音楽祭では3つのオーケストラと4人の指揮者によって交響曲全集が実現しましたが,音楽祭全体として核となる指揮者を明確化すべきと感じました。オープニングはスダーンさん,第9が広上さん,クロージングがブルンスさんが指揮をしましたが,どうも焦点がはっきりしない印象でした。

第9の4人の独唱者の皆様のサイン。上から竹多倫子さん,鳥木弥生さん,左側が甲斐栄次郎さん,右下がジョン・健・ヌッツオさん



【H34】17:00〜 石川県立音楽堂邦楽ホール
ピアノ・ソナタ全曲演奏第4夜

1)ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第5番ハ短調 Op.10-1
2)ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第6番ヘ長調 Op.10-2
3)ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第13番変ホ長調 Op.27-1
4)ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第15番ニ長調 Op.28「田園」
5)ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第18番変ホ長調 Op.31-3
6)ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調 Op.106「ハンマークラヴィーア」

●演奏
塚田尚吾*1,近藤嘉宏*2,田島睦子*3,藤野まり*4,平野加奈*5,バリー・ダグラス*6(ピアノ)
ナビゲーター:潮博恵

ついに,ピアノ・ソナタ全曲演奏企画もクライマックス。このまま日常生活に戻りたくないなぁという気持ちを持ちつつ,この日も充実の演奏を楽しむことができました。

何と言ってもバリー・ダグラスさんによる「ハンマークラヴィーア」が注目でしたが,それ以外も聞きごたえ十分でした。特に平野加奈さんによる第18番は,美しく推進力のある演奏。改めて良い曲だなぁと新発見する喜びがありました。

なぜか昔から好きな13番も田島睦子さんの思い切りの良い演奏の雰囲気にぴったりでした。第18番「田園」も好きな曲です。藤野まりさんが,大変たっぷりと完成度の高い演奏を聞かせてくれました。

第5番を演奏した塚田尚吾さんは,いつものことながら音がしっかりしていてベートーヴェンにぴったりだと思います。今後,他の曲の演奏も聞いてみたいと思いました。

第6番を演奏した近藤さんの演奏には,丁寧さと同時に,どこかユーモアを感じさせてくれる部分がありました。地味目の曲を大変面白く聞かせてくれました。

最後は,急遽代役で演奏することになったバリー・ダグラスさんによる「ハンマークラヴィーア」。まず暗譜で演奏されていたことに感動しました。ピアニストというのは凄いものだと改めて思いました。


第1楽章は,意外にさり気なく始まった後,どんどん重厚な世界へと入り込んでいきました。。重みのある,「らしい」第2楽章の後,第3楽章へ。この楽章だけで,20分近くあったと思いますが,力技だけではない,孤高の精神を感じさせるような澄み切った気分を持った演奏でした。最終楽章の前半は,怒涛のフーガとなります。実は私自身,フーガを聞くのは苦手で,ダグラスさんの演奏にも苦労しているようなところも感じられたのですが,その息をつかせぬ音の流れには圧倒されました。一番最後の一音は,気力を振り絞るような重い音でした。最後にたどりついた音(32曲聞いてきた最後の音)の安心感に感動しました。

ピアノ・ソナタ全曲演奏企画が,バリー・ダグラスさんによるハンマークラヴィーアで完結することになるとは,音楽祭の企画段階では誰も予想していなかったと思います。まずは,全曲演奏が無事完結してホッとすると同時に,大きな達成感と静かで熱い熱狂を味わうことができました。個人的には,今回の音楽祭の中でいちばんの成果だと思いました。

スナップ写真コーナーの写真もかなり増えていました。


【C34】20:00〜 石川県立音楽堂コンサートホール
クロージングコンサート

1) ブラームス/ハンガリー舞曲第1番
2) ブラームス/ハンガリー舞曲第5番
3) シュレーカー/組曲「王女の誕生日」〜踊る表示のたちのメヌエット
4) ジルヒャー/ローレライ
5) ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱」〜歓喜の歌
6) モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」〜恋とはどんなものかしら
7) モーツァルト/歌劇「魔笛」〜なんと美しい絵姿
8) モーツァルト/歌劇「ドン・ジョヴァンニ」〜お手をどうぞ
9) モーツァルト/交響曲第40番ト短調〜第1楽章(一部)
10) シュトラウス,J.II/ポルカ「雷鳴と稲妻」
11) (アンコール)リンケ/ベルリンの風

●演奏
ユルゲン・ブルンス*1-3,6-11;広上淳一*4-5指揮ベルリン・カンマーシンフォニー&オーケストラ・アンサンブル金沢合同祝祭管弦楽団,竹多倫子(ソプラノ*8),鳥木弥生(メゾ・ソプラノ*4,6),じょん・健・ヌッツォ(テノール*7),甲斐栄次郎(バリトン*8)

クロージングコンサートは,昨年までは交流ホールで,OEKを取り囲むような形で行われていたのですが,今回はコンサートホールで,「普通のコンサート」として行われました。

音楽祭期間中の写真によるスライドショーも例年通りでした。
 

この方が音響は良いし,大勢のお客さんが聞くことができるのですが,「音楽祭だけのプレミアム感」からすると,やはり昨年までの雰囲気が良かったかなと感じます。

演奏は大半がユルゲン・ブルンスさん指揮で,オーケストラの方も第9の時同様に,ベルリン・カンマーシンフォニー中心による合同オーケストラでした。この点についても,やはり,OEKをしっかりホストオーケストラに据えて欲しかったなと思いました。

プログラムは,「さんざんベートーヴェンを聞いて来たので,最後は「ベートーヴェン以外で」というコンセプトだったようです。ハンガリー舞曲であるとか,シュレーカーのメヌエットであるとか,いきなり「舞曲」で始まりましたので,今年のラ・フォル・ジュルネのテーマを何となくほのめかすような選曲でもありました。

このクロージングコンサートでのオーケストラの響きですが,大変充実したものでした。2階の真ん中辺りで聞いていたのですが,こんなに心地よい響きがするのだ,と感心しました。ブルンス指揮ベルリン・カンマーシンフォニーのお得意のレパートリーと言えそうです。

その後,鳥木弥生さんと指揮者の広上淳一さんによる,「一緒にうたいましょう」コーナーとなりました。歌ったのは2曲で,「ローレライ」とベートーヴェンの第9の中の「歓喜の歌」でした。

「ローレライ」の方は,日本でも昔から愛唱歌として歌われている曲ですので,私でも気持ちよく歌うことができたのですが,第9の方は,さすがに歯ごたえがありました。お客さんの中には,先ほどの第9公演の中で,合唱団に加わっていた居た人もかなりいらっしゃったようで,客席の色々な場所から,「本物の声」が聞こえてきました。その声と自分の声を比較してみると,「本物は予想以上に高い音だ!」と実感しました。改めて合唱の皆さんはすごいと思いました。

ちなみにこのコーナーでは,広上さんお得意の鍵盤ハーモニカに合わせて数回練習した後,オーケストラに合わせて歌いました。この練習も結構楽しかったですね。

その後は,第9のソリストとして登場した4人の歌手が登場し,モーツァルトの歌劇の中のアリアが歌われました,この流れからすると,「来年のテーマはモーツァルト?」と予感させるものでしたが,特に発表はありませんでした。

歌われたアリアの中では,やはりジョン・健・ヌッツォさんの「魔笛」の中のアリアがはまり役でした。甲斐栄次郎さんのドン・ジョヴァンニも甘い声がぴったりでした。女声2人の方は,それぞれの役柄にしては,やや重い感じがしました。特に竹多さんによるツェルビーナというのは,もしかしたら,滅多に聞けないとても貴重な機会だったのではないかと思いました。

その後,モーツァルトの交響曲第40番の第1楽章が演奏されたのですが...これが「???」の演奏でした。それほど長い曲でもないので,1楽章全部演奏されるかと思ったのですが,再現部だけを演奏していたようでした。かなり中途半端な演奏だったので,「そこまでして演奏する必要があるのかな?」と思いました。

演奏会の最後は,シュトラウスのポルカ「雷鳴と稲妻」,そして,アンコールで「ベルリンの風」が演奏されてお開きとなりました。

というわけで,ベルリン・フィルのワルトビューネでの演奏会を思わせる気軽に楽しめる内容ではあったのですが,地元中心の「ベートーヴェン祭」ならば,皆で楽しく第9を歌ったコーナーが面白かったので,これを最後に持ってきた方がしっくり来た気がしました。それと,ガルちゃんもホールに入れてあげて欲しかったかな。

というわけで,今回の音楽祭のクライマックスである,第9〜クロージングについては,個人的には消化不良気味でした。

このコンサートの時、広上さんは、しっかりガルTシャツを着ていました。盛り上げ方をよく分かっていらっしゃいます。クロージングコンサートについては,広上さんにお任せした方が良かったのではないかと思いました。今後の企画のアイデアですが,「広上さん指揮による、鍵盤付きハーモニカ大合奏」的な企画などがあると楽しそうですね。



今回の音楽祭については,私はピアノ協奏曲全曲とピアノ・ソナタ全曲を中心に参加しました。入場者数的には「成功(クロージング・コンサートでの前田利祐委員長の言葉)」と言えるのですが,そのいちばんの理由は「ベートーヴェンの音楽の力」だと思います。ベートーヴェンの音楽だったからこそ,成り立った新音楽祭だったと思います。

逆に言うと,ベートーヴェン以外の作曲家をテーマとして取り上げる場合,色々な工夫が必要になると言えます。モーツァルトがテーマでも同様の形を取れると思いますが,将来的には,「作曲家の力」だけに頼らない工夫が必要になると思います。

ここまで書いてきたとおり,十分に音楽祭を楽しんでおきながら,今更なのですが…今年のラ・フォル・ジュルネのテーマ「ダンス」は井上道義さんにもぴったりだったし,ラ・フォル・ジュルネ金沢の最終回として実現して欲しかった思いは今もあります。お金のかかる音楽祭の場合,芸術面の冒険と地域振興という目的の間で揺れざるを得ないですね。本当に難しい問題だとは思いますが,常に非日常感を味わえるような冒険はしていって欲しいと思います。

最後に,今回の音楽祭を通じて,地元の音楽ファンは「OEKを核とした音楽祭を求めているのでは?」と感じました。今後,この音楽祭を継続していくならば,ホストオーケストラとしてOEKをしっかり位置づけ,音楽的なコンセプトをもっと明確にしていく必要があると思いました。そのためには,音楽祭全体のコンセプトをまとめる音楽監督(ラ・フォル・ジュルネで言うところのルネ・マルタンさん)のような存在が,やはり必要だと思います。

そして,音楽祭の名称については,再考が必要でしょう。キャラクターのガルガンチュアは,一気に定着したと思うので,とりあえずは「金沢ガルガンチュア音楽祭(略称:ガル祭)」で良いのではないかと思います。

クロージングコンサートの後,ガルちゃんがお迎え。なぜか背を向けていました。


ラ・フォル・ジュルネ金沢から引き継がれた,今回の音楽祭ですが,「日常に芸術の熱狂を」という精神は生きていたと思います。特に4夜連続でピアノ・ソナタ全曲を演奏する企画は,これまでのラ・フォル・ジュルネ金沢にはなかった企画だったと思います。

いずれにしても新音楽祭の運営で苦労された皆様には,心から感謝したいと思います。音楽祭を成功させようという地元音楽ファンの熱さも実感できた1週間でした。

全公演が終了した後のボード
 

公演のプログラムとチケット半券の束