2001年10月の演奏会から

■10月2日(火)第107回定期公演M
指揮=井上道義,ゲスト=大阪フィルハーモニー交響楽団
9-10月の公演
定期公演マイスターシリーズの第1回目は,井上道義さん指揮による,OEKと大阪フィルによる合同演奏会です。マイスターシリーズというのは,PHシリーズよりも少し規模の大きな曲を中心としたプログラムになるようです。井上さんは,スケールの大きな曲がよく似合う指揮者なので,楽しめることは確実です。金沢でもとても人気のある方なので,過去の合同演奏会の時同様,大変盛り上がることでしょう。

過去の合同演奏会では,2つのオーケストラがそれぞれ単独で曲を演奏した後,室内オーケストラだけでは演奏できないような大曲を合同演奏する,とような構成でしたが,今回もそのとおりになるようです。そのメインとなる曲がR.シュトラウス/ツァラトゥストラはかく語りき(やっぱりこの曲は「かく語りき」と文語調でないと雰囲気が出ません)。ニーチェの同名の本からアイデアを借りて書かれた曲ですが,何といってもスタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」のテーマ曲として有名です。今年は2001年なので,いろんなところで演奏されているかもしれません。ただし,有名といっても冒頭のトランペットのファンファーレに始まる部分だけが有名で,その後は意外に知られていません。井上さんの指揮で,後期ロマン派の世界にどっぷりと浸れるのではないかと思います。この曲には冒頭部分からパイプ・オルガンが入り,いわゆる「重低音」が聞けます。私自身,生で聞いたことのない曲なので非常に楽しみです。オルガンは,井上圭子さんが担当します。サン=サーンス/糸杉と月桂樹という曲は,全く聞いたことのない曲ですが,こちらもオルガン入りの作品のようです。各オーケストラの単独演奏では,OEKがモーツァルト/ハフナー交響曲,大阪フィルがファリャ/三角帽子第2組曲を取り上げます。
■10月7日(日)第108回定期公演F 指揮=ルドルフ・ヴェルテン10月の定期公演
定期公演ファンタジーシリーズの第1回目は,タンゴプロジェクトというタイトルがついています。どういう形の演奏会になるのか,予想はできないのですが,タンゴを演奏するバンドとOEKとが共演するような形になるようです。碧空,アディオス・ノニーノ,淡き光に,ヴィオレッタに捧げし歌,ラ・クンパルシータ,ブル・ータンゴ,エル・チョクロといったタンゴの名曲が取り上げられます。そのタンゴのバンドですが,小松亮太&ザ・タンギスツが登場します。小松さんは,日本を代表する若手バンドネオン奏者で,ピアソラのCDを発表後,活発に活動をしている方です。今回取り上げられる作品も,いわゆるクラシック音楽の作曲家の作品はないようです。ファンタジーシリーズでは,このように音楽のジャンルの垣根を取り払い,素直に音楽を楽しむようなプログラムが組まれることになります。指揮のヴェルテンさんは,今年の4月に客演しています。イ・フィアミンギというベルギーの室内オーケストラの音楽監督で,ピアソラをはじめとしていろいろなジャンルの音楽を取り上げている方ですので,今回の指揮者としては最適です。今回は,この他に,ロベルト杉浦という人が歌と踊りで登場します。映像も使われるようなので,これまでのOEKの公演にはなかったような雰囲気が味わえそうです。
■10月14日(日) ビゼー/歌劇「カルメン」 
指揮=ジャン=ルイ=フォレスティエ
カルメン
OEKは,数年前から毎年1本オペラを取り上げるようになりましたが,今年は2001ビエンナーレいしかわ秋の芸術祭の一環として,ビゼーのカルメンが上演されます。ビエンナーレというのは,2年に1度の祭というような意味ですが,2年前には,「蝶々夫人」が上演されています。これが好評だったので,毎年オペラが取り上げられることになったのだと思います。ただ,今回の上演は,セットや豪華な衣装のある通常の上演ではなく,オーケストラがステージの上で演奏する演奏会形式による上演です。バリトンの池田直樹さんが,案内役を務めるという点でも,昨年の「椿姫」と同じイメージになります。カルメンを演じるのは日本でいちばん多くカルメンを歌っていると思われる伊原直子さんです。貫禄のあるカルメンが楽しめるのではないかと思います。その他では,ミカエラ役で,石川県出身の広瀬美和さんが登場します。指揮も,おなじみのフォレスティエさんです。フォレスティエさんは,アンコールでよく,カルメンの中の「アルカラの竜騎兵」を演奏していたので,この作品にはきっとこだわりがあるのだと思います。
■10月19日(金)第109回定期公演PH 指揮=ルドルフ・ヴェルテン
この定期公演では,バッハ/ブランデンブルク協奏曲全曲が演奏されます。通常,全曲はCD2枚分ぐらいに収録されていますので,少し長めの演奏会になりそうです。その分,「お得」なのではないかと思います。演奏曲順は,わからないのですが,多種多様な協奏曲集ですので,ソリストがたくさん登場します。ビラによるとフルートのウィリアム・ベネットさん,トランペットのウーヴェ・コミシュケさん,チェンバロのシルヴィア・エレックさんが登場します。ベネットさんは,イギリスを代表するフルート奏者で,以前,OEKが管弦楽組曲の全曲演奏を行った時にも客演していました。コミシュケさんは,恐らく,第2番に登場するのだと思います。超高音の続出する曲なので,相当演奏するのが難しい曲です。エレックさんは,昨年の定期にも登場し,ブランデンブルク協奏曲第5番を演奏しましたが,今回は,別の指揮者で同じ曲を共演するということになります。これらのソリスト以外に,OEKの奏者たちもソリストとして登場します。ゲスト・コンサートマスターのサイモン・ブレンディスさん,フルートの岡本えり子さん,オーボエの加納律子さんです。オーケストラのコンサートというよりは,室内楽のコンサートに近いものになりそうですが,ステージが身近に感じられる新ホールならば,大オーケストラを聴くのとは違った魅力が楽しめるのではないかと思います。
■10月21日(日)洋・邦楽器ふれあいコンサート 指揮=ルドルフ・ヴェルテン
石川県立音楽堂は,洋楽用コンサートホールと邦楽用ホールを含むのが大きな特徴ですが,この日の演奏会は,その建物のコンセプトをプログラム化したような演奏会です。日本の現代作曲家が邦楽器とオーケストラのために作曲・編曲した曲が5曲取り上げられます。登場する楽器は琴と尺八です。春の海,越天楽など有名な曲も含まれています。指揮は,ルドルフ・ヴェルテンさんですが,10月のプログラムを見るだけで,そのレパートリーの幅広さがわかります。たしか,数年前,篳篥の東儀さんと共演したのもヴェルテンさんでしたから,日本の伝統的楽器に相当関心が強い方なのかもしれません。演奏会の構成・演出は,水野好子という人が担当します。