2001年9月の演奏会から

いよいよ,2001年9月にJR金沢駅前に石川県立音楽堂がオープンします。そのオープニング・シリーズとして,9月14日から9月16日にかけて柿落とし公演が行われます。
柿落公演■9月14日(金)
一般の人以外では,もう少し前にお披露目の演奏会があるようですが,一般の人対象の公演としては,この日の演奏が最初の演奏会となります。そのメインプログラムが岩城宏之音楽監督の指揮によるベートーヴェンの第9です。岩城さんは,「余程のことがない限り,第9を指揮しない」というポリシーをお持ちですが,新ホールのオープンというのは「余程のこと」に当るようです。真に祝祭的な演奏が聞けるのではないかと思います。合唱団は,バンベルク交響楽団合唱団です。バンベルク交響楽団は,数年前,金沢を訪れ,ホルスト・シュタインさん指揮で渋いブラームスを聞かせてくれましたが,OEKとは何かとつながりが深いようで,今回,その付属の合唱団であるこの合唱団が柿落しのお祝いに登場することになりました。第9を始め,定期公演でも登場します。全国数カ所でもOEKといっしょに演奏旅行をするようです。第9の前に外山雄三編曲によるバッハのトッカータとフーガも演奏されます。パイプオルガン付きの新ホールの性能をチェックするには最適な曲目といえそうです。

■9月15日(土)
これはOEKの演奏ではなく,石川県民交響楽団・合唱団による演奏です。指揮はやはり岩城さんです。この団体がどういう団体なのかは,見てみないとわからないところがあるのですが,新ホールのオープンを県民皆でお祝いしようという趣向だと思います。演奏されるハイドンの四季の春,秋というのは以前,OEKの定期でも取り上げられたことがあります。ホルストの惑星の方は,金沢で演奏されたことはあるのでしょうか?初演のような気がします。その意味でも大変楽しみな演奏会です。

■9月16日(土)
柿落し公演の3日目は,檀ふみ・池辺晋一郎のN響アワーの司会コンビが登場します。演奏されるのは,池辺晋一郎作曲のオラトリオ「呼びかわす山河:前田綱紀の時代」という新作です。脚本は,石川県出身の佐々木守さんです。この方は,昨年,定期公演で演奏された「ペールギュント」の脚本も書かれた方です。語り手は檀ふみさんです。来年のNHKの大河ドラマは「利家とまつ」ですが,それを先取りしたような作品になるのではないかと思います。ちなみに,松尾芭蕉役で登場するバリトンの直野資さんは,石川県出身だったと思います。池田直樹さんをはじめ,その他の独唱者もおなじみの方ばかりです。合唱は,OEK合唱団が担当します。それにしても,3日連続というのは,聴く方も大変かもしれませんが,指揮の岩城さんをはじめ,OEKの方々にとっては大変なハードな仕事だと思います。ご健闘をお祈りしています。

■9月20日(木) 第106回定期公演PH 指揮=岩城宏之
9月〜10月の定期公演
新ホールになって最初の定期公演です。これから定期公演は,フィルハーモニーシリーズ(PH),マイスターシリーズ(M),ファンタジーシリーズ(F)の3種類に分けて行われることになります。このうちのPHシリーズは,いちばんベーシックな感じのプログラムになります。

記念すべき新ホール第1回目の定期公演は,オール・モーツァルトプログラムです。いちばんOEKらしさを出せる選曲といえますが,中ではバンベルク交響楽団合唱団が登場する戴冠式ミサ曲がいちばんの聞き物となります。モーツァルトの合唱曲といえば,レクイエムが有名ですが,完成した作品という点では,この曲が代表作でしょう。オルガンも入る曲なので,新ホールの機能を生かすこともできます。オペラのアリアを思わせる曲もあり,祝祭的な気分には相応しい曲といえます。2曲目のヴァイオリン協奏曲第4番の独奏者には,角田美樹さんが登場します。数年前の北陸電力主催のヴァレンタインコンサートでOEKと共演しているようですが,定期は初登場です。9月2日に金沢市観光会館で行われたジョイントコンサートにも神谷未穂さんという若手ヴァイオリニストが登場し,モーツァルトを弾いていますが,比較するのも面白いでしょう(私は行けなかったのですが)。最初に演奏される交響曲第40番は「素のOEK」の美しさを味わうには最適の曲です。