La Folle Journee au Japon 「熱狂の日」音楽祭2006:モーツァルトと仲間たち ホールAプログラム モーツァルト:ミサ曲ハ短調K.427 2006/05/05 15:00〜 東京国際フォーラム・ホールA |
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1)モーツァルト/ミサ曲ハ短調K.427 2)モーツァルト/アヴェ・ヴェルム・コルプス ●ペーター・ノイマン指揮コレギウム・カルトゥシアヌム,ケルン室内合唱団 ヒョン・ミョンヒ(ソプラノ),アリソン・ブラウナー(メゾ・ソプラノ),ヴィンツェンツォ・デォ・ドナート(テノール),ティロ・ダールマン(バス)
先の演奏会に続き,こちらの方も積極的に選んだものではなかったのですが,本当に素晴らしい演奏を堪能できました。「これぞプロ集団」という演奏でした。井上道義さん指揮のM.ハイドンのレクイエムも良かったのですが,それを上回る曲であり演奏でした。この日の午後は,ハ短調のミサ曲を2曲聞くという,これまでに体験をしたことのない曲の聞き方をしましたが,特に,これまで生で聞く機会が無かったモーツァルトのミサ曲ハ短調の良さを実感できたのが,いちばんの収穫でした。ミサ曲としては,未完成の曲とのことですが,素晴らしい作品でした。 この曲の編成は,先に聞いた,井上道義さん指揮によるM.ハイドンのレクイエムの時よりは少し小さ目でした。オーケストラ・アンサンブル金沢ぐらいの大きさの室内オーケストラ+40人ほどの合唱団という感じでした。今回登場した,コレギウム・カルトゥシアヌムとケルン室内合唱団ですが,本当に素晴らしい響きを出していました。オーケストラは演奏前に非常に念入りにチューニングを行っていましたが,そのこともあり,全曲に渡り,透明感溢れる響きを楽しむことができました。古楽器奏法を行っていたかどうか私にはよく分かりませんでしたが,非常にすっきりとした響きを作っていました。ちなみに弦楽器の配置はコントラバスが上手側に来ていました。ヴァイオリンが対向配置だったか判然としませんでしたが,「個性的で強烈な古楽器演奏」ではなかったのは確かです。 どちらも指揮者のペーター・ノイマンさんが組織した団体で,モーツァルトのミサ曲全曲録音を行っているのですが,その自信に満ち溢れた,落ち着きと気品に満ちた演奏となっていました。 この演奏にさらに華を添えていたのがソプラノのヒョン・ミョンヒさんの歌でした。この曲は,ソプラノのソロが非常に多いのですが,全曲に渡り,ヴィブラートの少ない透明でよく通る声を楽しませてくれました。この人の歌が出てくると,会場全体の空気がすっと変わるようでした。オーケストラと合唱の作り出す音楽と共に,高貴で清潔な音楽を作り出していました。 メゾ・ソプラノのアリソン・ブラウナーさんの歌も素晴らしいものでした。この二人の二重唱などは,陶酔的な美しさを感じさせてくれるものでした。男声の方は,女声に比べると出番は少なかったのですが,大変バランスの良い歌でした。 これはモーツァルトの曲の特徴なのかもしれませんが,ソロが出てくる曲はオペラのアリアのような雰囲気,合唱のみの部分は厳粛な宗教曲の雰囲気となります。この点が,この曲を聞きやすくしているいちばんの理由だと思いました。 具体的に言うと,クレドの最後の方の「キリストが聖霊によって生まれた」という辺りのソプラノの歌はヘンデルのメサイアの一部分のような感じ,グロリアの中間部の付点音符が続くあたりの合唱の厳格な雰囲気はバッハの宗教曲のようででした。この硬軟取り混ぜた雰囲気が,モーツァルトの宗教曲の魅力だと思います。その中で,合唱団の歌には,すっきりとしていながらも重厚なムードがあり,全曲をがっちりと引き締めていました。最後のベネディクトゥスでは,独唱4人と合唱が揃い,穏やかな感動を秘めて美しく締めてくれました。 ノイマンさんの作る音楽は,慌てたような部分は皆無で,全曲に渡りじっくりとした音楽を味わわせてくれました。先にも書いたとおり,宗教曲のプロと呼べるような演奏だと思いました。盛大な拍手に応えて,アンコールで「アヴェ・ヴェルム・コルプス」が演奏されましたが(独唱者4人も合唱団の中に加わっていました。微笑ましい光景でした),これもまた穏やかな暖かさと感動に満ちた演奏でした。 そんなに自己主張の強い演奏ではないのに(しかもこれだけの大ホールだったにも関わらず),高級な輝きに満ちた音楽を聞かせてくれた演奏者に対して,盛大な拍手がいつまでも続いた演奏でした。 このコンサートの後,別行動をしていた家族と待ち合わせ(東京国際フォーラムで待ち合わせをするのはなかなか大変でしたが),地上広場付近で土産物を見ました。 |
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(2006/05/06) >>地上広場&みやげものへ |