La Folle Journee au Japon
「熱狂の日」音楽祭2006:モーツァルトと仲間たち
最後に...LFJを通じて思ったこと
2006/05/05

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Review by 管理人hs
■最後に...LFJを通じて思ったこと
LFJは,通常のクラシック音楽のコンサートの枠を超えた企画ということで大きな注目を集めていますが,このイベントに参加しながら,近年注目を集めている,インターネット上のビジネス・モデルとの類似性を漠然とですが感じました。具体的に言うと,Googleなどに代表される”一見無料のビジネス”や"オープンソース"と呼ばれる無料ソフトウェアの隆盛といった現象と似た潮流がクラシック音楽状況にも起きつつあるのではないかと感じました。料金を無料に近づけながらお金を儲ける手法―この辺を探る必要がクラシック音楽にも求められているのではないかと思いました。そのヒントがLFJにあると感じました。

数年前から,クラシック音楽の過去の名演を集めた安価なBOX CDが出回っています。今回のLFJに関連しても,タワーレコードから10枚約2500円というCDが発売されました(NAXOSの音源と過去の名演を組み合わせたものです)。爆発的な人気を集める新しいレパートリーが生まれにくいクラシック音楽界では,今後,CD(特に過去の名演)の価格は,限りなく無料に近づいていくのかもしれません。

そういう状況で注目されるのは,「どう聞かせるかという演奏上,選曲上のアイデア」と「生演奏の魅力」です。CDを売るのではなく,アイデアを売るのです。もちろん商品・サービスとしての最低限のクオリティも備えている必要があります。

今回のLFJについてもそのことが当てはまります。岩城宏之さんによる「一晩でベートーヴェンの交響曲を全曲演奏する」というコンサートも似た発想かもしれません。今回聞きに来た聴衆の中には,演奏者や曲目目当ての人もいたでしょうが,大部分の聴衆は,大勢の生身の演奏家と聴衆が出会うことによって生み出されるお祭り気分を味わいたくて,出かけていたと思います。そして,そのおみやげとしてCDを買っていきます。

6枚組3000円のクラシック音楽のベストCDがよく売れている現象との類推で考えると,コンサートについても多数の曲を廉価で集中させることで,「何か面白いことが起きそうだ」という予感が聴衆の方に沸いてきます。1件あたりのコンサートの入場料を下げ,その分たくさんのコンサートを行い,その結果,大勢の聴衆を集め,将来の消費者を増やす−こういう発想の方が大きなビジネス・チャンスを生む可能性が高い,こういったアイデアがLFJの根本にあると思います。

これまでは,コツコツと定期的にコンサートに出かけるコンサート・ゴーアがクラシック音楽の世界を支えてきていたのですが,その形態にも新しい発想が求められる時代になってきています。LFJのようなコンサートを毎月行うことは難しいし,行う意味もありませんが,年に1度ぐらいこういう「お祭りコンサート」を行うことは,これからのクラシック音楽界の状況を変えていくためのエネルギーとアイデアの源泉になる可能性があると感じました。

クラシック音楽を生で聞く「演奏会」という形式がずっと続いて欲しいと思っている私のようなものにとっては,LFJはいろいろなことを考えるきっかけを与えてくれる刺激的なものでした。ただし,まだ答えはわかりません。来年以降のLFJの展開に注目したいと思います。
(2006/05/06) >>LFJ2006トップに戻る